1. トップ
  2. 月刊 経団連
  3. 巻頭言
  4. 日本の未来を感じる社会実装

月刊 経団連 巻頭言 日本の未来を感じる社会実装

新浪剛史 (にいなみ たけし) 経団連審議員会副議長/サントリーホールディングス社長

サントリーグループの経営トップとして国内・海外を飛び回る毎日のなかで、私は、経済財政諮問会議の民間議員として、この国の未来という途方もなく大きな課題に思いをはせる時間も大切にしている。

未来への鍵は、IoTやAIを社会実装して高齢化社会の多くの課題解決を図ることであり、技術革新を徹底してより低炭素な社会を実現し、そしてプラスチックによる海洋汚染を解決に導くことだ。何としてもSociety 5.0の時代を早期に実現していきたい。

そのためにはアベノミクスの「第3の矢」が今こそ必要だ。最近は「第3の矢」を言う人たちが少なくなっているが、発想を変えればまだまだやることはある。公的サービスの産業化やグレーゾーンの撤廃、いまだ不十分な人材の流動化など、構造改革を産学官労にて推し進めていけばわが国の生産性は飛躍的に向上する。地域においても同様だ。行政が思い切って発想を転換することで、スマートシティの実装ベースでの成功事例が出始めている。

福島県会津若松市では、住民の承諾を得てデータを提供してもらう「オプトイン型」のデータ収集方法で、個人のバイタルデータを収集・分析し、その分析結果を各家庭にフィードバックし、生活の質の向上に貢献している。さらに医療の分野や、再生エネルギーの分野でも大きな前進が期待されている。こうした新しい時代を生み出そうという挑戦が首都圏などの大都市ではなく、会津若松の地で始まっていることに、私は日本という国の底力を感じずにはいられない。実際に高齢化が進んでいる会津若松に先端を走るIT企業等が続々と進出し、さまざまな技術の社会実装のもと会津大学にてSTEM(Science, Technology, Engineering and Mathematics)人材も育成されている。

Society 5.0による大きな成功を目指すなかで、このような腰を据えた実装成功例を産学官が連携して積み重ねていけば、躍動感のある日本社会を再度つくっていくことができると信じている。

「2019年10月号」一覧はこちら

「巻頭言」一覧はこちら