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月刊 経団連 巻頭言 共生社会の実現に向けて

津賀 一宏 (つが かずひろ) 経団連副会長/パナソニック会長

9月5日に閉幕した東京パラリンピックは無観客ではあったものの、過去最長のテレビ放送がなされ、多くの方に感動をもたらした。障がいの有無に関係なく、あらゆる人々が前向きに生きられる「共生社会」に思いを致すきっかけとなったのではないか。

国際パラリンピック委員会によると世界人口の約15%、日本では厚生労働省の報告書によると、約965万人、約8%の方が何らかの障がいを有している。また、身体障がい者の実に7割近くは65歳以上であり、今後の高齢化の進展により、障がい者数は一層増えていくことになる。現在健常な方でも年齢を重ねるにつれて、何らかの障がいを抱える可能性があることを考えれば、「共生社会」の実現は誰にとっても身近な問題である。

政府が2017年に決定した「ユニバーサルデザイン行動計画2020」では、「『障害』は個人の心身機能の障害と社会的障壁の相互作用によって創り出されているものであり、社会的障壁を取り除くのは社会の責務である、という『障害の社会モデル』を全ての人が理解し、それを自らの意識に反映していくことが重要である」との基本の考え方を示している。

企業はこれまでも障がい者雇用の推進やユニバーサルデザインの製品・サービスの提供、街づくりでのバリアフリー化促進に取り組みながら「共生社会」の実現に貢献してきた。また東京パラリンピック開催決定以降、経団連参加企業を中心にパラスポーツ支援も定着してきた。

一方で2012年、パラリンピックが大きな注目を集めたロンドンでは、インフラのバリアフリー化を推進するというより、困った方を見つけたら周囲が自然に手を差し伸べることで問題を解決していた。

企業としては、引き続き自らの取り組みを強化するだけでなく、生活者一人ひとりが「共生社会」に向けて行動を起こしていけるように促していくことにも注力すべきである。

今回の東京パラリンピックが契機となって多様な個性を尊重し合い、助けを必要とする人がいれば手を差し伸べ、そこから元気や勇気をもらう。分け隔てのない、助け合う社会、オリンピックとパラリンピックが一体となる─それが、理想的な社会の姿なのではないだろうか。

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