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月刊 経団連 座談会・対談 サーキュラー・エコノミーの促進に向けて

細田 衛士
東海大学副学長・政治経済学部教授

野田 由美子
経団連審議員会副議長、環境委員長
ヴェオリア・ジャパン会長

市川 秀夫
経団連審議員会副議長、資源・エネルギー対策委員長
レゾナック・ホールディングス相談役

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資源循環に関し我が国では、3R(Reduce、Reuse、Recycle)推進及び適正処理の徹底等を通じた取り組みが一定の成果を挙げてきた。こうした中、世界人口の増加に伴う資源消費量の増大や、昨今の国際情勢に端を発する資源供給の不安定化への懸念から、経済安全保障の観点からも、我が国におけるサーキュラー・エコノミー(循環経済)の促進が求められている。
欧州では、サーキュラー・エコノミーの促進を、環境問題への対応としてのみ捉えるのではなく産業政策として位置付け、経済の仕組み自体を変え、成長につなげていくことを掲げている。
我が国においても、これまでの循環型社会の形成において蓄積した技術やノウハウを強みとし、中長期的な競争力強化につなげていくことが重要である。
そこで本特集では、国内外のサーキュラー・エコノミーを巡る議論や動向を踏まえ、サーキュラー・エコノミー促進の重要性、経営トップの意識改革、社会全体での機運醸成に向けた方策などを議論する。

市川 秀夫(経団連審議員会副議長、資源・エネルギー対策委員長/レゾナック・ホールディングス相談役)
SDGsやカーボンニュートラルへの取り組みは、企業存続にとって不可欠の経営課題だ。強い危機意識を持って、サーキュラー・エコノミー(CE)への取り組みを進めていくが、企業経営の観点からは、経済性の問題と投資回収見通しの難しさがある。企業は、短期的な収益に直結する動脈側への投資を優先することになり、静脈側への投資は考えづらく、そのロジスティクスを企業側で負担するのも困難である。これを乗り越えるには、企業トップが強い意志を示す必要がある。CEを可能にするには、コスト面、品質面でのハンディキャップを製品価格に転嫁する、或いは税制上の優遇をするなどの政策の裏付けが求められる。一般生活者も大量生産・大量消費型の発想を切り替え、CEを成り立たせるために多少コストが高くても受け入れることが必要である。

野田 由美子(経団連審議員会副議長、環境委員長/ヴェオリア・ジャパン会長)
EUにおけるサーキュラー・エコノミー(CE)の背景には、大量生産・大量消費・大量廃棄の経済システムが限界に達し、生産と消費そのものの在り方を変えるべきだとの問題意識がある。日本は、資源の多くを海外に依存する上、カーボンニュートラルの実現には再生エネルギーだけでは不十分であり、CEへの転換は待ったなしだ。サーキュラーな経済システムは、循環の輪が小さいほど効果が高く、その推進は分散型社会と親和性があり地方創生にも資する。製品の設計や材料調達の段階からリサイクル性を考慮し、廃棄物を効率的に回収する仕組みを構築する必要がある。そこにはデジタル技術の活用が欠かせない。CEは、「リサイクル産業」ではなく、耐久性、修理性、リサイクル性に優れた製品を作る「ものづくり産業」だ。質の高いものづくりに強みを持つ日本にこそチャンスだ。

細田 衛士(東海大学副学長・政治経済学部教授)
EUでは、サーキュラー・エコノミーの概念を明確にし、雇用の増加や経済成長につなげるべく、各国がそれぞれの強みを活かしながら取り組んでいる。日本の強みは、各企業が技術を活かして着実に実践していく点である。プロダクトチェーン全体で連携・協力してコストを削減することが重要だ。これまでの循環経済は廃棄物行政の上に成り立っていたが、もう1歩進めて、資源循環を前提にした静脈ロジスティクスを再設計すべき。また、「ものづくり」にサービスの付加価値を乗せ、消費者のグリーンなものに対する需要を実現できるような環境づくりが必要だ。サービス需要を喚起し、消費者もそれに応えれば、生産部門・商品部門も変化し、均衡ある成長と雇用増加も不可能ではない。

岩村 有広(司会:経団連常務理事)

  • ■ サーキュラー・エコノミーとは
  • 経済と環境・資源のwin-winの関係を目指す取り組み
  • ■ サーキュラー・エコノミーに取り組む意義
  • 資源循環は企業存続に不可欠な経営課題
  • 日本が取り組むべき3つの理由
    ─資源制約、カーボンニュートラル、地方分散
  • 日本の強みは技術を積み上げ着実に実践していくこと
  • ■ サーキュラー・エコノミー促進に向けた課題
  • 業界の垣根を越え一体的に取り組む
  • 経済性の壁を乗り越えるためには
  • インセンティブ政策の打ち出しとビジネスモデルの再設計
  • 資源循環を前提とした静脈ロジスティクスの再設計
  • ■ サーキュラー・エコノミー促進に向けて政府・企業・国民に求められる役割と期待
  • 産業共生に向けた新たなシステム構築へ
  • グリーン思考の需要を表明できる環境づくりに向けて
  • オープンマインドな企業間連携で新しい価値を生み出す
  • 生活者の大量生産・大量消費型の発想を切り替える
  • 成長戦略の中にサーキュラー・エコノミーを位置付ける
  • ものづくりに強みがある日本が世界をリードしていく

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