Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2012年4月12日 No.3082  「財政支出に依存しないかたちでの成長実現に向けた方策」で説明聞く -みずほコーポレート銀行の山田執行役員産業調査部長から
/経済政策委員会・財政制度委員会合同企画部会

経団連の経済政策委員会企画部会(村岡富美雄部会長)と財政制度委員会企画部会(森田敏夫部会長)は3月29日、東京・大手町の経団連会館で合同部会を開催し、みずほコーポレート銀行の山田大介・執行役員産業調査部長から、「財政支出に依存しないかたちでの成長実現に向けた方策」をテーマに説明を聞いた。
概要は次のとおり。

(1)成長戦略が実行されない背景

ペーパーワークとしての成長戦略の立案は、すでに二巡、三巡しており、課題抽出の段階は終わった。問題の本質は、実行されていないことにある。理由は、厳しい財政状況に直面するなか、個別施策に関して財源の裏打ちが乏しいからである。国内市場が伸び悩むなか、呼び水としての財政支出がなければ、民間投資の拡大は期待できない状況である。

(2)政府事業資産の売却を通じた成長の実現

厳しい財政状況と、かつてないほど深刻な産業空洞化の危機に直面するわが国は、公債発行でも増税でもない財源によって成長戦略を主導し、同時に、財政赤字を改善することで将来不安を払拭し、内需を刺激する必要がある。そこで、政府事業資産のスクラップアンドビルドという発想が重要となる。

すなわち、水道事業といった過去に一定の実績がある「今をつくった事業」を、政府が民間へ売却することで、財政状況を改善させる。同時に、そこで得られた財源を、医療・介護、農業といった「未来をつくる事業」へ回すという考え方である。これは、民間投資の呼び水効果も期待できる施策である。

(3)医療・介護、農業分野の成長産業化

医療・介護、農業分野は、今後の成長が期待でき、かつ、産業連関波及効果も大きく、内需主導型の産業である。今後は、これらの分野を伸ばしていくべきである。

医療・介護分野では、高齢者住宅や病院等をまとめて運営する「トータルライフケア公社」を設立することが考えられる。さらに、全国に135万人いる失業保険受給者をそこで雇用すれば、財政負担は軽減され、システム全体も自律的に回っていく。

他方、農業は、耕地面積と就農者年齢、および農家の専業度という三つの要素で、生産性がほぼ決まる。そこで、農業の大規模化につながる農地の集約や、新規就農の促進、さらには専業度の向上に向けて、企業からの投資を呼び込むような農業への転換が必要である。仮に、農業の労働生産性を50%高めることができれば、国際競争力は約10倍向上すると見込まれる。

しかし、これらの改革を、中央政府主導で実現することは難しい。中央官庁には縦割り行政の壁があり、仮に水道事業の民間売却を行うとしても、障害となる法律が多すぎて前へ進めない。産業・経済の地盤沈下が進行する地方自治体において、首長が強力なリーダーシップを発揮し、改革を推進すべきである。

【経済政策本部】