Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2012年5月17日 No.3085  海洋再生可能エネルギー開発の取り組みを聞く -海洋開発推進委員会総合部会

経団連は4月24日、東京・大手町の経団連会館で、海洋開発推進委員会総合部会(山脇康部会長)を開催した。当日は、国土交通省の大石英一郎・海洋政策課長、経済産業省資源エネルギー庁の森本将史・新エネルギー対策課課長補佐、環境省の平塚二朗・地球温暖化対策課課長補佐を招き、海洋再生可能エネルギーの開発に関する取り組みについて説明を聞くとともに意見交換を行った。
会合の概要は次のとおり。

■ 国土交通省説明

海洋再生エネルギーに関して、国土交通省は洋上風力発電の普及や拡大に必要な環境整備に取り組んでいる。
浮体式洋上風力発電(注)の安全基準を策定しており、4月23日に安全確保の技術基準を公表した。2013年度までに、今後50年間で想定される最大の風速に耐えられる基準を達成するために収集すべき気象データや実験方法などのガイドラインを策定したい。
着床式洋上風力発電(注)は北海道の瀬棚港や茨城県の鹿島港にあるが、港湾における導入を促進するために、地域の関係者間の調整を円滑に行う仕組みを構築する。

(注)洋上風力発電は、設置方法で大きく二つに分けられる。海底に直接設置するものは「着床式」、海に浮かせて海底と係留索でつなげて設置するものは「浮体式」と呼ばれる

■ 経済産業省資源エネルギー庁説明

現在、資源エネルギー庁の基本問題委員会でエネルギー基本計画(2010年6月閣議決定)の見直しを行っており、再生可能エネルギーの高い目標を掲げる方向でほぼ合意が得られている。
今年度予算では再生可能エネルギーについて約900億円の関連予算を計上した。そのなかで洋上風力発電については52億円の予算が計上され、風車の大型化に関する技術開発に取り組む。海洋エネルギー技術研究開発については21億円の予算が計上され、波力、潮流、海流、海洋温度差発電の要素技術を開発している。
また、昨年度の補正予算では、福島の復興・再生のシンボルとして、浮体式洋上ウィンドファームの実証研究を行うこととされた。

■ 環境省説明

2010~15年度に環境省は、わが国初となるフルスケール(2メガワット)の浮体式洋上風力発電実証機の建造・運転・環境影響評価などを実施する。
環境省は、2010年12月に浮体式洋上風力発電の実証事業の実施候補海域として長崎県五島市椛島沖を選定した。その特徴としては、地元漁業関係者や住民の同意が得られていることや、厳しい日本の気象や海象に対応できる発電システムなどがある。今年度に小規模試験機を設置および運転し、来年度にフルスケールの実証機を設置することで、2016年度以降の実用化に貢献したい。

<意見交換>

山脇部会長が「洋上風力発電とエネルギー政策全体の関係はどうなるのか」と質問したことに対し、経済産業省資源エネルギー庁の森本課長補佐は、「エネルギー基本計画では、太陽光発電や風力発電の数字は大きくなるだろう」、環境省の平塚課長補佐は、「中央環境審議会の小委員会で風力発電の導入目標と導入見込量について議論している」、国土交通省の大石課長は、「全体の流れに合わせて洋上風力発電の技術開発や整備を進める」と答えた。

【産業技術本部】