Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2012年6月14日 No.3089  TPP(環太平洋経済連携協定)を梃子とする経済連携の促進に向けて緊急提言を取りまとめ -一刻も早いTPP交渉参加の英断を求める

経団連(米倉弘昌会長)は11日、「TPPを梃子とする経済連携の促進に向けて-一刻も早いTPP交渉参加の英断を求める」を取りまとめ、関係各方面に建議した。提言の概要は次のとおり。

■ 成長戦略としての経済連携の推進

「貿易・投資立国」を国是とするわが国は、国を開き、貿易・投資の自由化を推進することが経済の発展に不可欠である。とりわけ、成長著しいアジア太平洋の活力を取り込んでいくことが喫緊の課題となっている。

現下の最重要課題は、FTAAP(アジア太平洋自由貿易圏)実現に向けて最も先行するTPP交渉への一刻も早い参加と、これを梃子として日中韓FTA、ASEAN+6経済連携協定の交渉を速やかに開始することである。わが国にとって望ましいルールを構築できるよう、交渉への早期参加を通じて主体的に関与していくことこそが国益にかなう。TPP交渉の進捗状況、今後の展開を考えると、6月18、19の両日にメキシコで開催されるG20サミットを目標に、政府として交渉参加を決断し、内外にその意思を明確に表明すべきである。

■ TPP交渉への早期参加の意義

わが国を含む新規交渉参加国がTPPのルールづくりに実質的に関与していくためには、遅くとも年内にはTPP交渉に参加しなければならない。また、わが国と並行して交渉参加協議中のメキシコ、カナダに後れを取ることなく交渉に参加していかなければならない。G20サミット等の好機を逸することなく、可及的速やかにわが国として交渉参加の意思表明をすべきである。

米国という主要な市場も包含し、かつ高水準の経済連携を目指すTPPへの参加は、これまでの経済連携におけるわが国の劣勢を挽回する好機である。また、TPPを通じ経済的な相互依存関係をより深化させることが、経済交流の拡大のみならず、アジア太平洋地域の安定にも寄与する。

さらに、高水準の経済連携を通じて、人・モノ・カネ・サービスが国境を越えて自由かつ円滑に往来することが可能となれば、中小企業や農林水産業等を含むあらゆる産業において、新たなビジネスチャンスを見いだすことができる。加えて、資源や食料の安定供給、製品・食品の安全など、国民生活の安全・安心をアジア太平洋地域レベルで確保することにも資する。

■ TPPを梃子とする通商政策の推進

TPPは参加国との経済連携強化のみならず、わが国通商政策推進の梃子として機能しつつある。

交渉参加が遅れ、あるいは参加が困難となれば、日本が関わる他の経済連携全般の進展自体が停滞することが懸念される。政府は、通商政策全体を推進する観点からも、TPP交渉への参加決断により全体のモメンタムを維持すべきである。

具体的には、TPP交渉への参加を梃子として、日中韓FTA、ASEAN+6経済連携協定、日EU・EPAなどの経済連携協定の交渉を早期に開始することが必要である。

■ 国内構造改革の推進と経済連携との両立

TPPなどの高水準の経済連携の推進にあたっては、活力溢れる農林漁業の実現、競争力強化に資する投資の促進、人材の育成・確保、規制・制度改革など、国内の構造改革に不退転の決意で取り組むべきである。

とりわけ農業に関しては、あらゆる政策手段を総動員して国内農業の改革を推進し、農業の競争力強化と成長産業化を目指す必要がある。

【国際経済本部】