Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2012年6月14日 No.3089  大学に求められる諸改革と産業界への期待を聞く -日本学術振興会の安西理事長から/教育問題委員会企画部会

経団連は5月25日、東京・大手町の経団連会館で教育問題委員会企画部会(岩波利光部会長)を開催し、日本学術振興会の安西祐一郎理事長から、大学に求められる諸改革と産業界への期待について聞いた。安西理事長は現在、中央教育審議会の大学分科会長を務めている。

■ 求められる大学教育の質保証

安西理事長は冒頭、大学分科会大学教育部会が3月に発表した審議まとめに基づき、「少子高齢化やグローバル化、情報化といった社会を取り巻く急激な変化を受け、これからの若者には、社会の変化に対応し、未来を切り開く力が求められる。そのため産業界も、以前のように大学教育には何も期待しないという姿勢ではなく、大学教育の質保証を求めるようになっている」と指摘した。しかし現状では、日本の大学生の平均学修時間は、1週間当たり1~5時間が最も多く、11時間以上が過半数を占める米国の学生と比較して、かなり少なく、「産業界や社会の求める、実習や体験活動などを伴う質の高い学士教育を実現するためには、授業の事前準備や事後の復習といった学生の学修時間の増加・確保が不可欠」であるとの認識を示した。そのうえで、「教員と学生が意思の疎通を図り、互いに刺激を与えながら、知的に成長することができる課題解決型の能動的学修(アクティブ・ラーニング)を実施する必要がある」と述べた。

■ アクティブ・ラーニング実現のために求められる取り組み

安西理事長は、アクティブ・ラーニングを実施するためには、(1)どれくらい知っているかという知識の量を問うのではなく、持てる知識のどの程度を実際に自分のものとして使うことができるかという学生の学修到達度を測る方法の研究・開発(2)大学の教育内容に関する情報を、ウェブサイト上で標準化されたフォーマットで公開することで、学生や保護者、企業関係者などが、大学教育の実態を簡単に比較検討することが可能となるような大学ポートレート(仮称)の整備(3)FD(Faculty Development、大学の授業改善のための組織的取り組み)など、教員の教育に対する評価を行い、その結果を教員の教育力向上や処遇の決定などに活用している大学への支援――などが必要であると説明した。

最後に、「大学は学生が主体的に学ぶところという原点に立ち返るため、学生や大学関係者、保護者、企業関係者が大学教育の改善のためにどのような取り組みが必要かについて、積極的に意見交換をして議論を深める必要がある」と述べ、産業界の協力を求めた。

【社会広報本部】