Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2012年6月28日 No.3091  今後の津波対策のあり方聞く -最大級の津波も想定し適切な対策を/海洋開発推進委員会総合部会

経団連は18日、東京・大手町の経団連会館で、海洋開発推進委員会総合部会(山脇康部会長)を開催した。当日は、東京大学地震研究所の古村孝志教授を招き、今後の津波対策のあり方について説明を聞くとともに意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。

■ 東日本大震災のメカニズム

東日本大震災は、単なるマグニチュード9の地震ではない。過去数百年、日本海溝付近では、マグニチュード7~8の地震が40年周期で起きていた。今回は三陸沖から茨城沖までの東西200km、南北500kmの震源域が動いたことに加え、太平洋プレートが沈み込んだ日本海溝の付近の軸も連動して大きな津波が発生した。海底津波計で観測したところ、通常マグニチュード9の地震では、プレートは10~24mずれ動くが、海溝付近では最大で57mもずれ動いていた。

■ 東海・東南海・南海地震

政府の中央防災会議では、過去数百年間に起きた地震と津波から、東海・東南海・南海地震のマグニチュードは8.7と想定していたが、東日本大震災を踏まえて大きく見直す。駿河湾から九州・パラオ海嶺までが一つの震源域である場合、最大限でマグニチュード9.1の地震が起きる。
今年3月31日に国は、九州から房総半島までの最大級の津波の想定を示し、20~30mを超える津波が想定される場所もある。
そこで、数十年に1回起きる津波と、数百年~千年に1回起きる最大級の津波の二つに分けて、それぞれ適切な対策をすべきである。

■ リアルタイムの津波予測

東日本大震災の前から宮城県沖を観測していたが、地震の前にプレートの境界が動き始めるプレスリップはないまま大地震が起きた。
プレートの固着と変化の観測や、コンピューター「京」による巨大地震特有の現象などの再現などを行っているが、地震の2~3日前に警戒宣言を出すのは非常に難しい。
災害による被害を軽減するためには、事前の津波の予測だけではなく、コンピューターなどによるリアルタイムの予測や警報ができる仕組みが必要である。社会学や心理学も活用して、避難行動を促すようにしなければいけない。

<意見交換>

山脇部会長が、「地震の短期予知は無理であり、長期的・一般的な予測に切り替えていくのか」と質問したところ、古村教授は「阪神・淡路大震災には何も前兆がなく、その後、観測網などを整備したが東日本大震災もわからなかった。地震の基礎研究より、防災対策を一層重視する方向になるだろう」と答えた。

【産業技術本部】