Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2012年7月5日 No.3092  第107回労働法フォーラム -報告II 弁護士・木村貴弘氏
「労働法制の見直しへの対応策~高年齢者雇用安定法および労働契約法の改正法案」

弁護士・木村貴弘氏

経団連・経団連事業サービス主催、経営法曹会議協賛による「第107回経団連労働法フォーラム」が6月14、15の両日、都内のホテルで開催され、1日目の「職場のいじめ・嫌がらせ、ハラスメントに関するトラブルの現状と課題」(前号既報)に続き、2日目は「労働法制の見直しへの対応策」――について検討が行われた。報告の概要は次のとおり。

■ 高年齢者雇用安定法の改正の動きについて

今年1月6日に労働政策審議会が建議した「今後の高年齢者雇用対策について」では高年齢者にかかる現行の対象者基準が廃止され、特例(経過措置)の適用のない者については就業規則の解雇事由・退職事由以外での再雇用を拒否できなくなる。

高年齢者雇用安定法上の雇用確保措置を企業が講じなかったとしても、直ちに高年齢者を再雇用する義務が生じるわけではない。しかし、裁判例では、継続雇用を希望すれば当然に再雇用するという運用がなされた事案や、再雇用時の賃金の額や計算式が就業規則で定まっていた事案で、再雇用契約の成立を認めたケースがある。

また、再雇用契約が成立しなくても、雇用継続への期待が侵害されたと認められる場合、不法行為に基づく企業の損害賠償責任が認められる可能性がある。

■ 企業の対策

退職・解雇事由に該当する高年齢者を継続雇用の対象外とする企業では、就業規則に再雇用しない場合の事由を規定し、再雇用時に退職・解雇事由に該当しないか、選考手続きを厳格に行うべきである。また、再雇用契約を更新する際には、あらためて健康状態や再雇用後の勤務態度、勤務成績等を勘案して、更新の可否を決定することが必要である。

■ 労働契約法の改正法案について

改正労働契約法の要点は、有期労働契約から期間の定めのない労働契約への転換制度の導入、雇止め法理の法制化、期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止である。

無期労働契約へ転換する制度とは、法施行後に締結ないし更新した有期労働契約の契約期間の通算が5年を超える労働者が、当該契約の期間の満了までに事業主に転換を申し込めば、無期労働契約が成立したとみなすものである。

無期転換後の労働条件は、現に締結している有期労働契約の労働条件と同一とするが、労働協約や就業規則、個別契約において別段の定めがある部分はそれによる。無期転換後の雇用保障の程度は、いわゆる正社員の場合よりも低い。

■ 企業の対策

これまでは、無期の労働者イコール正社員、有期の労働者イコール契約社員というように整理し、労働条件に差を設けていた企業も少なくない。今後は、正社員と正社員以外の無期、有期の労働者それぞれに求められる役割等についてあらためて見直す必要がある。

また、従来労働契約期間の有無が労働条件に差を設ける大きな理由となっていた。今後は、期間のみを理由として差異を設けることはできず、「不合理」ではないことの説明が求められる。

<質疑応答>

参加企業・団体からの質問に対し、「高齢者の再雇用について、職務上の体力的資格に欠ければ、解雇事由に相当」「有期労働契約期間の通算について、親子会社の両方に所属していたとしても、別法人であれば通算されない」等、実務的な対応策について弁護士らによる活発な討論が行われた。

【労働法制本部】