Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2012年8月2日 No.3096  チャーラヤン・トルコ経済相と懇談 -日ト経済関係の展望聞く/日本トルコ経済委員会

チャーラヤン経済相(左)と釡委員長

経団連の日本トルコ経済委員会(釡和明委員長)は7月20日、東京・大手町の経団連会館で、訪日したトルコ共和国のザフェル・チャーラヤン経済大臣との懇談会を開催し、最新のトルコ経済情勢、4月に公表された新投資促進政策の概要、日トEPA(経済連携協定)への期待などについて聞いた。説明の概要は次のとおり。

日・トEPA早期締結に意欲示す

トルコ経済は好調を維持、さらなる発展に向けて貿易・投資を拡大

トルコは世界で最も急速に発展する国の一つである。昨年の経済成長率は8.5%、今年の第1四半期は3.2%であった。これには輸出の増加が大きな役割を果たしており、商品輸出は過去最高の1350億ドル、建設請負、物流、観光を含むサービス輸出は400億ドルを記録した。主要輸出先は債務危機や「アラブの春」により経済的な混乱が生じている欧州や中東・北アフリカ地域である。世界経済が予断を許さない状況にあるなか、トルコは躍進的な経済成長を継続しており、その背景には安定した政治、強固な銀行制度、健全な財政・予算規律がある。

共和国建国100周年の2023年には世界10位以内の経済大国になることを目標にしている。そのために、原子力発電所の建設等エネルギー分野に1300億ドル、鉄道・道路・港湾の整備等交通インフラ分野に1100億ドルを投資し、PPP(Public Private Partnership、官民連携)やBOT(Build Operate and Transfer、建設・運営・譲渡方式)でプロジェクトを実行していく計画である。

日・トEPAの共同研究立ち上げに合意、両国間の経済関係における協力覚書に署名

今般、玄葉外務大臣、枝野経済産業大臣との間で、「日本国及びトルコ共和国間の経済関係における協力枠組み設立に関する覚書」に署名した。これにより、両国は諸課題を解決して貿易関係を拡大強化する。また、イラクをはじめ第三国で協力を推進していく。

また、日・トEPAの共同研究立ち上げに合意した。この合意に対する経団連の貢献は大きく(注)、二国間EPAを早期に締結したい。双方が努力すれば1年以内の実現も可能である。トルコはEUとの関税同盟に加えて18カ国とFTA(自由貿易協定)を締結している。率直にいえば、トルコと韓国のFTAによって早晩韓国製品に対する関税が撤廃され、日本製品は市場を失うなどの影響を被るだろう。二国間貿易(日本の輸出超過)を見ると、日トEPAによって日本側がより多くの便益を得ることができる。日本は後れを取ってはならない。

(注)経団連は3月21日に、提言「日・トルコEPA交渉の早期開始を求める」を公表(3月29日号既報)。また、4月9日に経団連で開催した第19回日本トルコ合同経済委員会で、二国間EPAの展望についてトルコ海外経済評議会(DEIK)と議論し、その重要性を共有している(4月19日号既報)。

新投資促進政策を活用した日本企業のトルコ進出を歓迎

世界第2位の対外投資国である日本の企業は対トルコ投資を躊躇しているように感じている。トルコは外国企業の利益送金を保証し、銀行改革や法整備を徹底した結果、2003年以降1150億ドルの外国直接投資を受け入れた。新投資促進政策によって、これをさらに拡大しようとしている。ハイテク、高付加価値、イノベーション分野を対象に地域・産業別に優遇措置を講じるもので、日本企業の強みを存分に活かせる内容になっている。

トルコは国内7400万人の市場にとどまらず、4時間の飛行で56カ国、15億人が暮らし世界のGDPの3分の2に当たる23兆ドルを創出する地域に到達できる。最近では、国際企業の物流、生産基地はもとより、国際経営の一大拠点にもなっている。日本企業には是非投資促進政策を活用し、トルコに積極的に進出してほしい。

【国際経済本部】