Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2012年9月13日 No.3100  IASBとIFRS解釈委員会の活動状況を聞く -企業会計委員会企画部会

経団連は8月31日、東京・大手町の経団連会館で、企業会計委員会企画部会(谷口進一部会長)を開催し、国際会計基準審議会(IASB)理事の鶯地隆継氏とIFRS解釈指針委員会の湯浅一生氏から、最近の活動状況に関する説明を聞いた。

国際会計基準(IFRS)のわが国における取り扱いに関しては、金融庁・企業会計審議会から7月に中間的な論点整理が公表され、国際的な情勢を踏まえつつ、任意適用の実例を積み重ねていくこととされた。経団連においても企業会計委員会を中心に検討が行われており、任意適用の拡大に向けた課題の整理が続けられている。両氏からの活動状況に関する報告の概要は次のとおり。

1.IASBの活動報告(鶯地氏)

日本の産業界からIASB理事に就任して1年余りが経過するが、この1年間で、多くの基準開発が進んだ。米国財務会計基準審議会(FASB)とIASBは、基準の共同開発プロジェクトを進めてきたが、主要なプロジェクトについてはほぼ方向性が固まりつつある。具体的には、「収益認識」(売り上げなどをどの時点で認識するか)は、再公開草案が締め切られ、現在最終基準化に向けた作業が進み、来年早々には最終基準化の予定である。リース取引にかかる会計基準は、懸案となっていた借り手の費用処理のあり方についても、IASB内で意見集約ができ、現在は再公開草案を準備している段階である。一方、進捗が芳しくないプロジェクトとして、「金融商品の減損」(計上価額の引き下げ)と「保険契約に関する会計処理」があり、これらについては、調整が予定よりも遅れている。

2.IFRS解釈指針委員会の活動報告(湯浅氏)

昨年7月にIFRS解釈指針委員会に参加してから、いくつかの解釈指針やIFRSの限定的な修正プロジェクトに参画してきた。取り組んだプロジェクトの一例として、「インドネシアの土地の使用権の購入に関わる問題」があった。インドネシアにおいては、企業が土地の所有権を持つことが認められておらず、使用権しか購入できない。この場合、企業は有形固定資産、無形資産あるいはリース資産のいずれで財務諸表に計上するべきかが問題となる。委員会で議論を行ったが、「その国固有の問題だから、解釈指針委員会の検討課題としては取り上げない」との暫定的な結論に至った。この考え方は、日本において、IFRSと相容れない特有の商慣習等が存在する場合にも参考になる。今後、IFRSを日本で適用していく場合に、日本固有の事情で会計処理に問題が生じた場合、IASBの解釈指針委員会に持ち込むのか、日本独自で指針をつくるといった手法で解決すべきか、よく考えなければならないであろう。

3.意見交換

報告の後の意見交換では、「IFRSの適用を検討しているが、保険の会計基準の方向性が定まらない点が懸念される」「リースに関する会計基準は極めて影響が大きいので、実務上配慮してほしい」といった意見が出された。

鶯地理事からは、「日本の慣行に合致したかたちで適用できることが重要であり、IASBとしても各国の基準設定主体との連携を強化していく予定である」とのコメントがあった。

【経済基盤本部】