Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2012年11月29日 No.3111  第39回北陸地方経済懇談会を福井で開催 -決断と実行で国と地方の再生を

北陸地方経済懇談会であいさつする米倉会長

経団連と北陸経済連合会(北経連、永原功会長)は13日、福井市内のホテルで「第39回北陸地方経済懇談会」を開催した。懇談会には、経団連から米倉弘昌会長はじめ審議員会議長・副会長らが、北経連からは永原会長はじめ会員約120名が参加し、「決断と実行で国と地方の再生を」を基本テーマに、活動を報告するとともに懇談した。

開会あいさつのなかで北経連の永原会長は、デフレ克服、エネルギー問題、税・財政改革など多くの課題を抱えるなか、経済界が力を結集する必要があると呼びかけた。北陸経済については、会員向けアンケートで「底這い・下降している」と回答し、その原因として「輸出の低迷」を挙げる企業が増えているとし、輸出の回復が大きな課題であるとの認識を示した。また、政府の「革新的エネルギー・環境戦略」に対し、会員の約75%が「評価しない」としていることを引き合いに、「エネルギー基本計画」の策定にあたっては、原子力や再生可能エネルギーをめぐる諸課題や問題点、経済界の意見を考慮することを政府に求めた。

続いてあいさつした経団連の米倉会長は、次の総選挙でどの政党が政権をとるにしても、与野党が相互信頼に基づいて協力し、重要政策を具体的に前に進めていくことが急務であり、そうした政治状況をつくり出すためにも、近いうちに国民の信を問うてほしいと述べた。その後、景気の先行き懸念は全国に広がっているとの認識を示し、これに対する政府の緊急経済対策や日銀の金融緩和について、時宜を得たものと評価。こうした緊急対策に加え、TPPをはじめとする高いレベルの経済連携の推進、大胆な規制改革の断行などによって、民主導の経済成長を強力に後押しすることの重要性を強調した。

■ 活動報告

第1部の活動報告では、まず経団連から、奥正之副会長が景気について、後退局面にある可能性が高いとの認識を示し、補正予算など、タイムリーな政策を打ち出すことが必要と述べた。続いて渡辺捷昭副会長は、平成25年度税制改正提言を説明。法人税率の25%程度への引き下げなど、国内における投資や雇用の維持・拡大に資する税制の整備を政府に求めた。小島順彦副会長は、昨年度の規制改革要望のうち3割強から4割の要望に進展がみられ、環境の改善が進んでいるとし、さらなる規制改革の実現に意欲を示した。荻田伍副会長は起業創造委員会の報告書の概要を説明。いわゆる「オンリーワン企業」の事業成功の秘訣の情報共有を通じ、経済活力の回復を進めていく考えを示した。

一方、北経連からは、深山彬副会長が、2014年度末に迫った北陸新幹線の金沢開業への期待に言及するとともに、北陸3県全体の発展のために1年でも早い敦賀開業が必要との認識を示した。川田達男副会長からは、原子力政策や再生可能エネルギーの導入状況・課題に関する欧州視察の報告があり、欧州各国はそれぞれの電力事情に応じ、多様で戦略的な対応をしているとした。

その後、経団連から、畔柳信雄副会長が地方分権と道州制に関する経団連の取り組みを説明。北経連にさらなる広域連携の推進と道州制実現に向けた機運醸成を求めた。三浦惺副会長は、農業構造改革に向けた政府の直近の取り組みを紹介。政府に対し、農業の担い手の多様化、規模の拡大を通じた競争力強化に資する施策を求めた。篠田和久副会長は改正高齢法・労働契約法の概要を説明。事業活動の柔軟性に欠ける点が多く、産業空洞化に拍車をかけかねないとし、政府に粘り強く働きかけていく意向を示した。

エネルギー・環境政策や北陸の観光振興など

■ 意見交換

第2部の意見交換では、北経連から、(1)エネルギー・環境政策の行方(2)北陸地域の社会インフラ整備(3)北陸の観光振興(4)社会保障・税一体改革による財政の確立(5)持続的な経済成長を目指したイノベーションの創出(6)震災の教訓を得たサプライチェーンの構築――の6点について問題提起があった。

これに対して経団連からは、(1)短期的には安全性の確認と地元の理解を得たうえでの原発の再稼働、中長期的には原子力を含めた多様なエネルギー源の確保を求めていく(西田厚聰副会長)(2)大規模災害に対応する意味でも北陸のインフラ整備の必要性は増しており、国全体の戦略的観点から推進されるべき(渡文明審議員会議長)(3)北陸新幹線の開業の盛り上がりを観光・地域活性化につなげることが肝要(大塚陸毅副会長)(4)社会保障給付の効率化・重点化の推進、自助・共助・公助の役割分担の明確化が重要(斎藤勝利副会長)(5)イノベーション創出に向け、政府には、投資の拡充、研究開発拠点の充実や規制改革などの基盤整備、人材の育成が求められる(大宮英明副会長)(6)大規模災害に負けない強靭なサプライチェーンの構築には、民間の努力に加え、緊急時のルールを平時から策定しておくことが必要(宮原耕治副会長)――と発言があった。

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懇談会終了後、米倉会長と北経連の永原会長は共同で記者会見を行った。会見での米倉会長の発言は次のとおり。

農業の競争力強化

TPP交渉に参加するかしないかにかかわらず、農業は日本にとって重要な産業であり、その競争力を強化していくことが必要である。企業としても新たな農業関連技術の研究開発を進めている。例えば日本のコメは品種改良が進められるなど、非常に高い技術で育てられている。コストが高いという問題点については、農地を集積して大規模稲作を行うことが重要である。

北陸新幹線

東日本大震災の教訓から、大規模災害時の幹線交通網の重要性が確認された。輸送の代替手段を確保しておくことの重要性は一段と高まっている。

【総務本部】