Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2012年12月20日 No.3113  「エネルギー政策の再構築を求める」公表 -エネルギー政策、時間をかけて抜本的な見直しを

経団連(米倉弘昌会長)は東日本大震災以降、政府に対し、早期に電力需給の安定化を図るとともに、安全性を大前提に、エネルギーの安全保障、経済性、環境適合性という「S+3E」の適切なバランスのとれたエネルギー政策を立案するよう求めてきた。しかし、足元では、電力不足や電力料金の上昇圧力といった問題がいまだ解決していない。また、中長期のエネルギー政策についても、9月に政府のエネルギー・環境会議で取りまとめられた「革新的エネルギー・環境戦略」は、「2030年代に原発稼働ゼロ」を打ち出すなど、極めて多くの問題を抱えている。

経団連では、政府の検討にあわせて、過去3回にわたりエネルギー政策に関する意見を取りまとめてきた。これらを踏まえ、今般発足する新政権に対し、これまでのエネルギー政策の抜本的見直しを訴える意見を「エネルギー政策の再構築を求める」として18日に取りまとめ、公表した。提言の概要は次のとおり。

中長期のエネルギー政策など

■ 当面のエネルギー政策について

来夏の電力需給見通しと対策を今年度内に明らかにするとともに、今後3年から5年程度の電力の安定供給確保のための具体的方策と工程表を早急に明示する必要がある。

原子力発電所については、政府は再稼働に向けた道筋を早急に示し、安全性確保を大前提に、可能な限りそのプロセスを加速化すべきである。また、電気事業者のみならず、政府と原子力規制委員会が、安全性や再稼働の必要性等について国民や立地自治体の理解を得られるよう、しっかり説明することが重要である。

現行の再生可能エネルギーの固定価格買取制度および地球温暖化対策税は問題が多く、早急に見直すべきである。

■ 中長期のエネルギー政策について

省エネルギー・再生可能エネルギー等の現実的な導入可能量をあらためて精査する必要がある。そのうえで、中長期のエネルギー政策については、原子力を含む多様なエネルギー源維持の観点に立ち、時間をかけてゼロベースで議論し直すべきである。

エネルギー源別に進めるべき施策は以下のとおり。

  1. (1)原子力
    安全性確保を大前提に、引き続きベース電源として活用すべきである。そのためには、新たな原子力規制委員会の下で官民が協力して、地元を含む国民や国際社会の信頼回復を図ることが重要である。また、放射性廃棄物の処理のあり方や原子力損害賠償法改正について、国が責任をもって検討を進めなければならない。

  2. (2)石炭等の火力発電
    安価で安定的な電源として、引き続き活用していく必要がある。そのため、環境アセスメントの合理化や、高効率化・低炭素化を目指した研究開発等の取り組みを強化すべきである。

  3. (3)再生可能エネルギー
    高コストの機器の普及を急ぐのではなく、非効率や不安定といった弱点の克服に官民のリソースを集中することが必要である。特に、規制緩和や研究開発支援等を重点的に進めることが求められる。

  4. (4)省エネルギー
    技術に裏付けられた適切な省エネ基準の認定、研究開発促進税制の拡充等の支援が必要である。

■ 今後のエネルギー政策の検討に向けて

「革新的エネルギー・環境戦略」策定時に行われた、いわゆる「国民的議論」では、エネルギー政策の各選択肢が国民生活や企業活動に与えるマイナスの影響等、重要な情報が国民にわかりやすく提示されなかった。

今後の検討にあたっては、すべての重要な情報を明らかにしたうえで、十分な時間をかけて議論することが不可欠である。

エネルギー戦略は国家戦略そのものであり、長期的かつ大局的見地に立って、最後は政治が責任をもって決断するよう強く求める。

【環境本部】