Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2013年1月31日 No.3117  提言「情報通信技術の利活用による経済再生を目指して」を公表 -新産業・新事業創出のための環境整備を

経団連は22日、提言「情報通信技術の利活用による経済再生を目指して」を取りまとめ、公表した。提言の要旨は次のとおり。

1.はじめに

エネルギーの制約や高齢化の進展、労働力人口の減少など、わが国が直面する諸課題の解決に向け、ICTを積極的に活用してさまざまな分野でイノベーションを起こし、新産業・新事業の創出につなげることが重要である。

2.社会基盤の強化に向けた高度な電子行政の実現

国民目線に立った行政の電子化を推進するためには、府省横断的な司令塔である政府CIO(Chief Information Officer)が不可欠である。次期通常国会において、政府CIOの権限を法的に裏付ける関連法案を成立させることを強く求める。

また、きめ細かく利便性の高い行政サービスの提供のためには、番号法案の成立が必須である。行政機関同士、あるいは国と地方の間のデータ連携などを可能にすることで、国民目線の行政サービスを拡充することが期待される。今後は番号の民間活用を可能にする法整備も望まれる。

3.新産業・新事業の創出に向けた環境整備

企業は「情報」を、ヒト、モノ、カネに並ぶ第四の経営資源としてとらえ、新たなビジネスの創出につなげるため注力している。特に、ビッグデータと公共データの活用に注目が集まっている。

ビッグデータの利活用促進に際しては、収集されたデータに含まれる個人情報の扱いに関し、プライバシー保護とのバランスの確保の観点から、国民的なコンセンサスを形成していくことが重要である。公共データの活用については、行政機関にあるデータを民間にとってより使いやすくする諸施策が求められる。データにかかる著作権の包括的な許諾制度など、データ利用時の手続きの簡素化に加え、データカタログやポータルサイトの整備を進めることで、公共データの利用による新産業・新事業の創出を図ることが重要である。

利用環境の整備に際しては、クラウド技術の活用促進も重要である。その際、セキュリティーの向上や、データの越境移動にかかる法制度の適用の明確化・国際調和などの課題に取り組むことが求められる。

なお、これらの取り組みにあたっては「ICT利活用人材」の育成も重要である。

4.安全・安心な社会の実現

災害に強い情報通信ネットワークの整備や耐災害性を持ち、災害時にも住民情報をバックアップできる「自治体クラウド」の構築が重要である。老朽化したインフラについては画像情報やセンサー技術などの活用により、予防を含めた効率的な維持管理をすることも重要となる。

また、ICTによるエネルギーの効率的な利用をはじめ、情報ネットワークを備えた道路交通網の早期整備も一層の安全・安心につながる。

さらに、医療・介護分野のICT化の推進は喫緊の課題である。全国規模での地域医療ネットワークや医療等情報の利活用環境の整備により、超高齢社会における医療費の適正化・効率化に向けた取り組みが求められる。

なお、ICT社会において国民の安全・安心を守るためサイバーセキュリティーの強化は特に重要である。研究開発や人材育成の強化のほか、国際連携の強化も必要である。

【産業技術本部】