Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2013年2月7日 No.3118  連合との懇談会を開催 -今年の春季労使交渉における諸問題について意見を交換

あいさつする米倉会長(右)と古賀連合会長

経団連(米倉弘昌会長)は1月29日、東京・大手町の経団連会館で日本労働組合総連合会(連合、古賀伸明会長)との懇談会を開催した。経団連からは米倉会長をはじめ、副会長、審議員会副議長、関係委員長ら21名、連合からは古賀会長、会長代行、副会長、事務局長ら20名が参加。「今年の春季労使交渉をめぐる諸問題」をテーマに意見交換した。

開会のあいさつで米倉会長は、「安倍内閣はスピード感をもって経済再生の取り組みを進めている。経団連としても、安倍政権の政策遂行に全面的に協力していきたい」と述べるとともに、日本企業にとって良好な労使関係は大きな強みであり、今次交渉では、自社の存続と発展、雇用の維持・安定を確実なものとするために、労使が危機感を正しく共有し、課題解決に向けた建設的な議論を尽くすことが求められているとの考えを示した。

連合の古賀会長は、「デフレ経済から脱出できるか否かは、政府の適切な経済財政運営に加え、今次交渉の結果も大きなカギを握っている」と強調。日本再生に向けて、マクロレベルではデフレ脱却を、ミクロレベルでは人材への投資と持続的な生産性向上の好循環を目指して、ベクトルを変えていくことを提起したいと述べた。

両会長のあいさつの後、双方が今年の春季労使交渉にあたっての基本的な考え方を説明。連合側は、総額人件費を抑制する姿勢をとることで、日本全体に賃金デフレをもたらし、消費を縮小させ、内需が縮み、それがデフレに拍車をかけるという「合成の誤謬」を、一刻も早く断ち切る必要があるとの考えを示した。そのうえで、「傷んだ雇用と労働条件」の復元を目的に、賃上げ・労働条件の改善のために1%を目安に配分を求めていくとの闘争方針を明らかにした。

経団連側は、今次交渉では、企業の存続と従業員の雇用の維持・安定が最優先の議論になり、ベースアップを実施する余地はなく、賃金カーブの維持、定期昇給の実施の取り扱いが昨年以上の論点になるとの考えを示した。そのうえで、深刻かつ危機的な経営状況にある企業では、定期昇給の延期・凍結も含めた厳しい交渉となる可能性があることに言及した。また、短期的で一時的な企業業績の変動は、賞与・一時金に反映させることが一層不可欠になっていることを強調した。

意見交換

続いて行われた意見交換では、連合から、(1)競争力の源泉が「人財」ということは労使の共通認識であり、長期的な視点に立って人への積極的な投資が求められている(2)中小企業の労働者の賃金は、大手企業よりも低下が著しく、月例賃金で毎年2000円ないし3000円の差が累積されている(3)パート労働者の賃金は正規労働者の半分程度であり、賃金決定の際には、地域の賃金相場や最低賃金などが考慮されることが多く、正規労働者ほど働きぶりが賃金に評価されていないことは問題である――などの発言があった。

一方、経団連からは、(1)地方の企業は、経労委報告に記載している以上の厳しさを訴えており、雇用を守ることで精一杯との声が多い(2)増加傾向にある社会保険料の負担抑制は労使共通の課題であり、給付の適正化や社会保障の自助・共助・公助のバランスを見直していく必要がある(3)デフレからの脱却や実質GDPの成長を実現するためには、経済連携を実現し、貿易立国の良さを活かしていくことが一番確実な方法である(4)雇用や経済全体が上向くように、労使で協力できる分野は互いに力を合わせて具体的に進めていくことが大切である――などの意見が出された。

閉会あいさつで古賀会長は、「デフレからの脱却」や「人への投資」についての方法論は労使でどうしても交わらないが、接点を見いだすための努力は必要であり、その努力が今次交渉において求められているとの考えを示した。

続いて米倉会長は、労働組合と経営者はまさに「経営のパートナーシップ」の関係にあり、日本の企業経営において、素晴らしい労使関係は非常に貴重な財産であるとし、労使が虚心坦懐に意見交換することで、個々の企業がそれぞれ力を発揮することで経済全体が上向き、それによって雇用の維持・創出が可能になると総括した。

【労働政策本部】