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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2013年2月7日 No.3118 経団連労使フォーラム -米倉会長基調講演(要旨)

新政権への期待

わが国経済は、昨年後半から、欧州債務問題の長期化や新興国を中心とする海外経済の減速などを背景に後退局面に入っている。震災復興については、東日本大震災の発生から間もなく2年が経過しようとしているが、本格的な復興の実現にはまだかなりの時間を要すると見込まれている。このように大変厳しい状況が続くなか、新政権が緊急経済対策ならびに補正予算案を閣議決定したことは高く評価できる。

グローバル競争が激化するなか、経済活性化の妨げとなっている規制や制度の改革を断行し、わが国事業環境の国際的なイコール・フッティングを確保することが急務である。民間が持てる力を十分に発揮してイノベーションを加速させていくことができる環境を整備し、新たな投資と雇用の創出を喚起することで、経済活性化ならびにデフレからの早期脱却を実現させる必要がある。

重要政策課題の一つである経済連携については、日中韓FTAや日・EU経済連携協定の交渉開始など、アジア諸国やEU間で進展がみられた一方、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉への参加は、依然として大きな課題である。米国でも砂糖など一部の品目の関税撤廃は困難とみられており、すべての品目の関税を即時に撤廃することはあり得ない。したがって一刻も早く、TPP交渉への参加を政治決断し、日本の立場や具体的な考えを主張していくことがわが国の利益にかなうことである。

イノベーションの加速に向けた民間の取り組み

日本の再生に向けては政治の強いリーダーシップが不可欠だが、企業としても世界に誇る技術力と人材の力を梃子にイノベーションを加速し、自ら新たな成長の機会をつくり出していかねばならない。

経団連が推進している「未来都市モデルプロジェクト」は、今日の社会が直面している課題を解決するために、企業が大学や自治体と連携し、さまざまな分野の最先端技術やノウハウを持ち寄って実証実験を行い、革新的な技術やシステム、インフラを開発する取り組みであり現在、全国11の都市で各プロジェクトが進行している。「未来都市モデルプロジェクト」の成果を、東北に展開することで震災復興を支援できると考えている。また、パッケージ化し広く海外へ輸出することで国際社会の課題解決に貢献していきたい。

21世紀以降、9人もの日本人科学者がノーベル賞を受賞しており、これはわが国科学技術力の高さを示すものである。企業においても、こうした新たな科学的知見を事業や製品に応用する懸命な努力により、重要な成果を上げている。世界トップレベルの日本の技術力をもとに、産学官が、それぞれの役割と責任を明確にしながら有機的に連携し、イノベーションを推進することができれば、必ず、経済の活性化、産業競争力の強化につながる革新的技術を連続的に生みだしていくことができると考える。

経済界としては、政治のリーダーシップの下、こうした産学官の連携を強力に後押しするよう働きかけていく。

グローバル人材の育成・確保

世界に類をみないスピードで少子高齢化が進行するなか、わが国企業が持続的に成長していくためには、海外の需要を積極的に取り込んでいくことが必要不可欠である。そのためには、国際的なビジネスの現場における問題を的確に把握し積極的に対応していく力と、異なる文化や背景を持つ人たちと協力して問題を解決していくために必要な高いコミュニケーション能力をあわせ持つ「グローバル人材」の育成・確保に、積極的かつ戦略的に取り組む必要があり、日本企業は、旧来の枠組みを取り払い、グローバル経営に適したかたちに組織の姿を再構築していくことが重要である。

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