Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2013年2月28日 No.3121  欧州駐在大使との懇談会を開催 -EU、欧州情勢で説明聞く

あいさつする米倉会長(左から4人目)

経団連は19日、東京・大手町の経団連会館で欧州駐在大使との懇談会を開催し、日EU関係ならびにEUおよび欧州主要国の政治経済情勢について説明を聞くとともに懇談した。経団連からは、米倉弘昌会長、西田厚聰、川村隆、勝俣宣夫、奥正之、大宮英明、中村芳夫の各副会長らが出席した。
説明の概要は次のとおり。

「EU情勢、日EU関係」 塩尻孝二郎・EU代表部大使

債務危機は小康状態とはいえ、根本的な解決にはまだ時間がかかる。債務危機がEUの統合深化を促しているが、その深度とスピードは市場動向、各国選挙結果次第の面がある。重要事項の決定にあたって各国首脳、欧州理事会議長、欧州議会の重みが増している。

EUとの政治協定・経済連携協定(EPA)交渉を早期に開始するための準備を進めている。EPAの早期締結を目指すうえで「互いに何をすれば、互いに強くなれるか」を探求する必要があり、新興国を念頭に置いたルールのプラットフォームづくりが重要な論点になる。産業界同士の対話に期待している。成長・雇用の観点から、特に日本、米国とのEPA、FTAを重視している。二つは交渉のタイミングが重なるが、少なくとも日本にマイナスの影響がないようにしたい。

「英国の情勢」 林景一・駐英国大使

欧米経済の低迷・減速、国内消費の不振等により、オリンピックが開催された2012年もゼロ成長であった。失業率が高く、特に若年層では22%超と不安定要因になっている。政府は財政緊縮の一方、インフラ投資、法人税引き下げ等を行っているが、任期折り返し点を迎えても成果は上がっておらず、支持率は低迷している。EU離脱を求める声を受けて、残留を是とするキャメロン首相は、15年の総選挙で保守党が勝利した場合はEUと「新たな関係」について交渉し、17年末までに離脱・残留を問う国民投票を行う旨表明した。日本としては残留が望ましい旨伝えていく。

「ドイツの情勢」 中根猛・駐ドイツ大使

2010年に実質4.2%という統一後最高の成長率を達成した後、12年には0.7%と大幅に減速、13年は0.4%にとどまる見通しであるが、欧州全体のなかでみれば堅調である。ユーロ救済で与野党は一致しているが、財政規律重視の与党に対し、野党はEU重視、範囲を限定した債務共有化も場合により支持との立場である。メルケル首相は、財政規律重視を基本としつつ、野党の力も借りながらユーロ支援を行っている。連邦議会選挙を9月に控え、メルケル首相の支持率は高いが、連立相手FDPの支持率が低迷、さまざまな連立の組み合わせが取り沙汰され、予断を許さない。日本とは再生可能エネルギー、省エネ技術で協力の可能性がある。

「フランスの情勢」 小松一郎・駐フランス大使

金融危機の影響は軽微であったが、製造業の比率が低く回復が緩慢で、周辺国への貸出比率が高い銀行部門の調整圧力もあり、2012年はゼロ成長となった。13年は当初見通しの0.8%から下方修正の見込みである。政府は13年に財政赤字対GDP比3%、17年には均衡達成を目指しているが、現下の経済情勢を踏まえ目標を再検討する見通しである。社会党が地方政府を含め多数を占めているが、厳しい経済情勢のため支持率は低迷している。オランド大統領は対日関係を重視する姿勢を明確に打ち出している。日本との第三国における原子力分野での協力、再生可能エネルギー面での協力に期待している。

【国際経済本部】