Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2013年3月28日 No.3125  インフラの老朽化と今後の対策を聞く -根本・東洋大学経済学部教授から/運輸委員会物流部会

経団連は14日、東京・大手町の経団連会館で運輸委員会物流部会(丸山和博部会長)を開催し、来賓の根本祐二東洋大学経済学部教授から、わが国インフラの老朽化と今後の整備のあり方等について説明を聞いた。説明の概要は次のとおり。

■ インフラ老朽化問題の本質

わが国の社会資本は、1970年代をピークとするピラミッド型で急速に整備された。このため、老朽化による更新投資のピークを2020年代に迎えることとなるが、現状の予算規模ではすべてを更新するには大幅に不足するというバジェット・ギャップの状態にある。

民間企業のように投資を平準化するか、投資を減らす時には負債も減らして将来に備えていたならばこうした問題は生じなかったが、わが国の社会資本の投資パターンはいずれのパターンとも異なる。また、米国でも1930年代にニューディール政策によって整備したインフラが老朽化し、1980年代に問題が深刻化したが、右肩上がりの経済成長と人口増加が続くなかで、増税等を行うことで克服した。しかし、わが国は当時の米国とは経済・社会の状況が異なるため、時間の経過とともに老朽化問題が深刻になっていくことが懸念される。

■ 今後の対策

今後は、予算拡大、長寿命化、負担軽減といった対策を組み合わせていくことが求められる。予算拡大の面では最も本質的な対応は増税である。例えば、インフラ税を導入し利用者に課税することが考えられる。

更新・新規投資の際に、長寿命化仕様を採用することは必要である。しかし、既存インフラを改修して長寿命化を図ることは相対的に割高となる可能性が高い。

負担軽減策は、公共施設とインフラに分けて考える必要がある。まず、公共施設は、利用者の範囲に応じて、全域・校区・住区の3階層でマネジメントしていくべきである。利用者が市の全域に及ぶ中央図書館や文化ホールなどは、ワンセット主義を捨てて他市と分担する「広域化」を行う。利用者が学校区の中にある公民館等は、学校を建て替える際にテナントとして入れる「多機能化」を図る。利用者が住区ごとに異なる集会所や公営住宅は、自治体が保有せずに民間施設を利用する「ソフト化」を進める。そのうえで生じる余剰施設は、民間に売却・貸与するPRE(Public Real Estate)を進めていくべきである。

次にインフラについては、従来の事後保全から予防保全に切り替えることが重要となる。予防は常時行うので、指定管理者制度やPFI(Private Finance Initiative)、包括委託などの手段による民間委託が必要である。民間委託により、コストを大幅に軽減する事例も出てきており、今後の広がりが期待される。

同時に、インフラをハードではなくサービスとしてとらえる「インフラ・アズ・ア・サービス」の考え方でみると、新たなビジネスチャンスも生まれてくるだろう。例えば、公営住宅は自治体が所有する住宅に住むことではなく、健康的、文化的に住む権利を保証するサービスとしてとらえると、民間アパートへの家賃補助といった発想が出てくる。新たに道路をつくらずコンパクトシティーにするのも一例である。

【産業政策本部】