Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2013年4月18日 No.3128  「新しいASEANと日本外交」 -青山学院大学の山影教授が常任幹事会で講演

講演する山影教授

経団連は3日、東京・大手町の経団連会館で開催した常任幹事会で、青山学院大学国際政治経済学部の山影進教授から、「新しいASEANと日本外交」をテーマに説明を聞いた。講演の概要は次のとおり。

■ ASEANの沿革

ASEANの歩みは、次のような四つの期間に分けられる。その骨格と理念を確立した1967年の設立から76年に東南アジア友好協力条約を締結するに至るまでの第一期、停滞しつつも存在感を高めた第二期、92年以来、アジアで最初のFTAをつくり、拡大と深化を遂げた03年までの第三期、そして15年の「新しいASEAN」共同体の形成に取り組む第四期である。

当初は、経済協力関係よりも、近隣諸国との関係を安定させることに意義があったが、冷戦終結後の第三期には、ASEAN諸国の経済的繁栄を守るべきとの危機感が高まったため、地域の平和(Peace)とともに、それを通じた各国の繁栄(Prosperity)という「二つのP」を達成することが課題となった。その後、03年には自由貿易地域(当初目標)を実現した。

■ 新しいASEAN

ASEANは2015年を目標に、政治安全保障共同体、経済共同体、社会文化共同体をつくろうとしている。政治安全保障共同体とは、摩擦の種類に応じて、柔軟に解決方法を探ることを目指すものである。また、経済共同体は、単一市場と生産基地を兼ね備えた地域を目指しているだけでなく、賛成できる国が賛成できる事項について合意する「マイナスX」という柔軟な方式で統合を進めている。関税同盟をつくるとなると、シンガポールやブルネイなどの低関税国の水準に合わせなければGATT違反となるので、関税同盟を目指すものではない。

また、08年発効のASEAN憲章の実体化を目指し、年2回の首脳会議、事務局の強化などを進めている。

新しいASEANが追求しているのは東南アジアの一体化、連結性(Connectivity)を実現することと、米国や中国など大国を取り込みながらASEANの優位、中心性(Centrality)を確保することである(「二つのC」)。そこで、連結強化のために、ASEAN諸国を横断する運輸・通信インフラの整備や制度の共通化が進められている。

また、中心性を確保するため、FTAや広域連携のハブとなろうとしており、ASEAN+3、同+6、同+8などが生まれている。大国を枠組みに取り込みつつ、議長はASEAN諸国が持ち回りで務めることとし、議長声明を取りまとめる権限を大国に渡さないようにしている。

■ 日本とASEAN

日本はASEANと正式な関係をつくった最初の国である。日本とASEANの交流は、日本の合成ゴムが東南アジアの天然ゴム産業の脅威となり、73年ASEAN外相会議での対日批判を受けて、日ASEAN合成ゴムフォーラムが設立されたことから始まった。77年に福田首相が「日本はASEANの対等な協力者となる」と宣言。さらにアジア通貨危機の起こった97年には、日本のイニシアティブによりASEAN+3(日中韓)首脳会合が始まり、99年のアジア経済再生ミッションでは日本とアジアとの一体性を確認した。

その後、ASEAN諸国との経済連携協定が結ばれ、看護師・介護福祉士の受け入れも進みつつある。03年にはASEAN域外で初めての特別首脳会議を東京で開催。09年の日メコン交流年に続き今年、日ASEAN40周年を記念する交流年を迎える。

アジアにおいて米国、中国といった大国を取り込みながら、自らの地位をどのように確保するのか。日本とASEANは共通の課題を抱えている。引き続き、日本とASEANとの関係性を強めていくことが必要である。

【総務本部】