Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2013年6月13日 No.3134  わが国におけるPM2.5問題の現状と課題について聞く -環境安全委員会環境リスク対策部会

経団連は5月23日、東京・大手町の経団連会館で環境安全委員会環境リスク対策部会(梶原泰裕部会長)を開催し、環境省水・大気環境局の小林正明局長から、わが国におけるPM2.5問題の現状と課題について聞いた。同氏の発言の概要は次のとおり。

■ PM2.5について

PM2.5は、直径が10マイクロメートル(1マイクロは10万分の1)未満の浮遊粒子状物質(SPM)のうち、直径が2.5マイクロメートル未満の粒子である。PM2.5は、肺胞の内部に入り込み、呼吸器系に悪影響を及ぼすと考えられている。

PM2.5の成分や発生メカニズムは非常に多様で複雑である。例えば、塵の巻き上げ等に限らず、硫黄酸化物(SOx)、揮発性有機化合物(VOC)等の化学反応によっても発生する。SOx等に起因する硫酸イオンは全発生源のうち21%と高い割合を占める。ただし、国内で排出されるSOxについては以前から対策が講じられ、現在は環境基準と比べて非常に低いレベルで推移していることから、大陸で発生したSOxに由来するPM2.5の存在が示唆される。

■ 国内対策の経緯

SPMについては、以前から環境基準を設定して対策を実施してきたが、より小さい粒子については、対策に乗り出した段階である。

2009年に設定されたPM2.5の環境基準は、年平均で15マイクログラム/立方メートル以下、一日平均では35マイクログラム/立方メートル以下であり、世界的に標準的な値である。また、環境基準を超える際に注意喚起を行うため、「暫定的な指針となる値=70マイクログラム/立方メートル以上(朝の1時間値として85マイクログラム/立方メートル以上)」を設定した。この指針に基づき、これまでに注意喚起を行ったのは月当たり数回程度である。

■ 今後の国内対策

PM2.5の値が高まった場合は、各発生源に応じた対策を講じる必要があるが、例えば、東日本と西日本、あるいは都市部と地方等により発生源に差異があると思われるため、全国的に測定局を設置して成分分析を行う必要がある。また、分析結果を整理すれば、大陸から飛来してきた粒子の割合の推測が可能になり、これは国際的な議論に必須のデータとなる。このため、測定局の数を全国で1300程度まで増やす予定である。

なお、PM2.5の発生源の一つとされるVOCは、光化学オキシダントの発生源としての可能性も指摘されたため、規制に加えて産業界の自主的取り組みが実施されてきた。その結果、目標以上のVOC排出量低減を達成したことは高く評価でき、今後も取り組みを継続してほしい。

ただし、光化学オキシダントの濃度は環境基準値以下には至っておらず、PM2.5が光化学オキシダントの発生源となっている可能性も考えられるなど、これらの物質には相互に複雑な因果関係が考えられる。そこで、総合的な検討を行うための新しい専門委員会を立上げる予定である。

■ 今後の海外対策

東アジアの大気汚染問題については、従前から日中韓の連携の枠組みがあり、今後も協力関係を多岐に展開していく。

例えば、中国との間では、「日中友好環境保全センター」の設立、「日中大気汚染対策セミナー」の開催等に取り組んでおり、中国が科学的根拠をもとに発生源として推測されること、わが国として、できる限り協力をする用意がある旨を伝えている。

【環境本部】