Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2013年6月13日 No.3134  島尻内閣府大臣政務官を迎え沖縄物流ハブ構想について懇談 -21世紀政策研究所・農畜水産品輸出促進検討会

あいさつする島尻政務官

経団連の21世紀政策研究所(米倉弘昌会長、森田富治郎所長)は5月30日、都内で第1回農畜水産品輸出促進検討会(座長=深川由起子早稲田大学政治経済学部教授)を開催した。

同検討会は、21世紀政策研究所の研究プロジェクト「沖縄物流ハブの可能性」のもとに設立され、経団連「未来都市モデルプロジェクト」の一環として推進されるもの。メンバーは、農畜水産業界、産業界、沖縄県の関係者27名によって構成され、島尻安伊子内閣府大臣政務官を顧問に迎えているほか、関係7省庁の幹部もオブザーバーとして参加している。

沖縄物流ハブ構想は、日本国内やアジアの主要空港へのアクセスが4時間以内という那覇空港の地理的優位性を活用して、日本の強みである高品質な農畜水産品を集荷の翌朝には、アジア諸国の消費者の自宅に新鮮な状態で個別配送するという新たな輸出スキームの確立を目指している。

会議の冒頭、深川座長は、「成長を続けるアジアの巨大市場をめぐっては、欧米や中国、韓国との激しい競争が予想されるが、沖縄の地理的優位性のうえに、日本独自の冷凍・冷蔵輸送や個別配送といった高度物流システムをアジア諸国で展開し、これに『お取り寄せサイト』などのeコマースを組み合わせることで日本の優位性を発揮することができる。さらに、このスキームが実現すれば、沖縄振興に加えて、農畜水産品の輸出振興につながるほか、東北の農畜水産品の対アジア輸出を通した復興支援にも資することになる。ひいては、『国家戦略特区』を活用した日本の産業競争力強化や日本の対アジア外交にも好影響を及ぼすことになる」と述べた。

また、島尻政務官は、この取り組みを未来志向なものであると高く評価したうえで、「実現にあたっては、民間企業が蓄積してきた知恵を結集しプロジェクトを推進していくことが必要で、クールジャパン戦略の一つとしても世界に打ち出していける。そのための支援や旗振りを行っていく」との意向を示した。特に、同プロジェクトには、検疫や食品検査に関する実務的な課題があることを指摘し、政府としてもスピード感を持って取り組みたいと抱負を語った。

農業界からは、「無添加食品をクール配送によって品質を保ちながら翌日アジアに届けられるようになれば、ブランド化された高付加価値の商品をアジアで販売することが可能になる」などプロジェクトへの期待が寄せられた。

他の委員からも、「航空と宅配という個別の物流システムを包括的に連携させる新たなビジネスモデルの構築が可能になる」といった意見が出されたほか、「シンガポールでは、家庭内で料理をする比率が5割を切るといわれており、外食産業を対象とした農畜水産品輸出にビジネスチャンスがある。こうしたなかで『食の安全』といった日本の強みを活かしながら、日本の農畜水産品に対する信頼を勝ち取れる」との発言もあった。

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今後、同検討会では、島尻政務官のリーダーシップのもと、深川座長を中心とした政府・産業界・農畜水産業界・沖縄県によるオールジャパン体制を整え、作業を進めることが確認された。また、プロジェクトの実効性確保の観点から、当面、本スキームの対象地域を香港に絞り、官民が協調して具体的な調整を加速していくこととなった。

【21世紀政策研究所】