Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2013年7月4日 No.3137  中長期のエネルギー政策のあり方について説明を聞く -日本エネルギー経済研究所の豊田理事長から/資源・エネルギー対策委員会企画部会

政府は今年3月から、総合資源エネルギー調査会において新たなエネルギー基本計画の策定に向けた議論を始め、年内を目途に取りまとめるべく検討を進めている。同計画は国民生活や企業活動に与える影響が極めて大きいため、現実的なエネルギー政策が構築されるよう、経団連としても検討を行い、積極的に政府に働きかけていく必要がある。

そこで、経団連は6月25日、東京・大手町の経団連会館で資源・エネルギー対策委員会企画部会(鯉沼晃部会長)を開催し、日本エネルギー経済研究所の豊田正和理事長から、中長期のエネルギー政策のあり方について説明を聞くとともに意見交換を行った。豊田理事長の説明概要は次のとおり。

■ エネルギー政策にかかる三つの環境変化と主要国のエネルギー政策

最近3年の間に、「アラブの春」「シェール革命」「福島原子力発電所事故」という三つの環境変化が生じており、日本を取り巻くエネルギー情勢は不確実性に満ちている。

そのような状況においても、主要国の原子力政策は、アジアを中心に維持・拡大の方向で変わらない。また、再生可能エネルギーについては、着実に導入は進むが、コストや不安定性等の課題に直面している。化石燃料については、相対的にクリーンな天然ガスが志向されるなか、欧州では安価な石炭へのシフトも見られる。

■ 日本のエネルギー政策

エネルギーの安全保障(Energy Security)、環境(Environment)、経済性(Economic Efficiency)の「3E」の重要性は不変であるが、今後の日本のエネルギー政策は、これらに安全性(Security)とマクロ経済への影響(Macro Economic Impact)を加えた、「3E+S+M」を確保すべきである。

日本は、原子力を含めたバランスのとれたエネルギーミックスを実現する必要がある。

■ 六つの政策課題

今後のエネルギー政策では、次の六つの課題解決を通じ、日本経済の発展への貢献を目指すべきである。

第一に、安全性の確認された原子力発電所の再稼働とエネルギーミックスの早期明確化である。政府は、原子力発電の再稼働状況がある程度明らかになる来年中には、エネルギーミックスを決めなければならない。

第二に、再生可能エネルギーについては、ドイツにおける固定価格買取制度による電気料金の高騰の経験も踏まえ、合理的な利用促進を図る必要がある。

第三に、電力システム改革については、日米欧のエネルギー供給構造の相違、欧州における過少投資や米国で停電が生じた理由などを十分踏まえることが求められる。

第四に、気候変動については、エネルギー原単位改善を中心としたボトムアップ方式の枠組みの構築に向けた日米共同イニシアティブが重要である。

第五に、省エネルギー、LNG調達におけるアジア・プレミアムの解消、原子力の安全確保に向け、北東アジア間の協力を強化・促進すべきである。

第六に、東アジアにおける省エネルギー協力および日本のインフラ輸出を促進することが重要である。

【環境本部】