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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2013年7月18日 No.3139 第24期「経団連フォーラム21」7月講座を開催 -中東諸国めぐる最新情勢を山内アドバイザーから聞く

経団連事業サービス(米倉弘昌会長)は1日、都内で第24期「経団連フォーラム21」7月講座を開催した。当日は、山内昌之アドバイザー(東京大学名誉教授)から中東諸国をめぐる最新情勢を聞いた。説明の概要は次のとおり。

■ 歴史・宗教構造を踏まえたイスラム理解が重要

中東は、わが国のエネルギー政策上で重要な位置を占めるが、残念ながら、イスラム社会に対する情報や歴史認識が、わが国は著しく欠如している。昨今、エジプトやトルコで民衆の抗議行動が激化しているが、展開の早い中東状況を的確に理解するには、イスラム社会の歴史的・宗教的構造を踏まえることが重要である。少なくとも(1)アラブ諸国(シリア・レバノン・ヨルダン等)(2)トルコ(3)イラン――を分けて考える歴史観が必要である。アラブ諸国は、第一次大戦後のオスマントルコの解体・英仏による委任統治の結果、分裂と対立構造が現在まで尾を引いている。大まかにいえば、君主国家は、権力が安定し再分配政策が功を奏し国民の不満が高まらないのに対し、共和国家は、政権が不安定で人権抑圧や法の支配の欠如がみられ、これが「アラブの春」につながっていった。

■ トルコの情勢

トルコは建国以来、政教分離政策(=世俗主義)を強く推進し、イスラムは個人の内面の問題で公の場に持ちこまないという考え方が根付いた。その結果、民主主義が一定浸透したが、一方で国防軍の力が強まり、過去3回クーデターが起きている。エルドアン政権はイスラムの影響を希釈しつつ、国防軍の人事・予算権を掌握し抑制するなど、過去10年間の政権運営のなかで西欧型の法の支配と行政優位の体制を整え、経済成長を遂げるなど実績をあげた。ところが、ロシア型の大統領制を導入し、政権のさらなる長期化を目指したため、政治腐敗への警戒感から民衆のデモ行動が起こっているのが現状である。

■ イランの動き

報道は少ないがイランの政権交代の動きも重要である。イランが核兵器保有に執着する背景には古代ペルシアから連なる歴史的誇りと大国意識がある。ロウハニ新政権は、欧米との関係改善を模索するだろうが、核開発は停止せず、欧米諸国による経済制裁は続くとみられる。また、新政権の宗教者への対応や合理的な統治体制を構築できるかが注目される。なお、アメリカの中東外交は、根本的な歴史認識の欠如から一貫性がなく、今後もイランとの和解は難しい。例えば、イランを抑制する立場のイラクのフセイン政権を倒すことで、結果としてイランを利するなど、今後も不合理な対応が続くことが懸念される。

■ 今後のエジプトの動き

質疑応答では、参加者からエジプト情勢に関する質問が寄せられたのに対し、「エジプトは『アラブの春』を経て一度決した道を非民主主義手続きで後戻りさせるという構図。本来は、反ムルフィ勢力が結集し対立候補を絞って選挙手続きを進めるべきだが、軍の出動・再支配というシナリオで進むとみられるのが残念である」と述べた。

◇◇◇

フォーラム21は、今月23~28日の日程でサハリンへの寄港・視察を含む船上研修を予定しており、山内アドバイザーから中東情勢をめぐる集中講義のほか、今後のエネルギー政策等への理解を深める。

【経団連事業サービス】

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