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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2013年8月29日 No.3143 女性活躍推進へ活発な議論を展開 -「女性活躍推進シンポジウム」パネルディスカッション

経団連は7月29日、東京・大手町の経団連会館で「女性活躍推進シンポジウム」を開催した(前号既報)。

来賓の森まさこ女性活力・子育て支援担当大臣の講演に続くパネルディスカッションでは、片山さつき総務大臣政務官・参議院議員、伊藤一郎旭化成会長(経団連少子化対策委員会共同委員長)、渡邉光一郎第一生命保険社長、八丁地園子藤田観光常務執行役員、阿部奈美日本経済新聞社編集委員兼論説委員兼女性面編集長の5名がパネリストとして参加し、活発な議論が行われた(モデレーターは讃井暢子経団連常務理事)。

さらにシンポジウム終了後は、約200名の参加を得て交流会が開催され、来賓の佐村知子内閣府男女共同参画局長と岩田喜美枝21世紀職業財団会長から、女性活躍推進に向けた経団連の取り組みに期待する旨のあいさつがあった。

パネルディスカッションの概要は次のとおり。

1.パネリストによるプレゼンテーション

  1. (1)渡邉光一郎氏(第一生命保険社長)
    第一生命保険では、グループビジョン「いちばん、人を考える会社になる。」を目指す価値創造経営の枠組みを「DSR(Dai-ichi's Social Responsibility)経営」と銘打ち、この枠組みに沿って持続的な成長を目指している。各組織において、新たな価値を生み出していくためには、多様な個性を持つ人財がビジョンや経営目標の実現に向けて力を合わせることが必要となることから、当社では「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)」の推進を経営戦略として位置づけている。
    このように、D&Iを推進するうえでは「何のために」取り組むのかをしっかり示し、従業員の共感を得ることが重要と考えている。

  2. (2)伊藤一郎氏(旭化成会長)
    経団連では、少子化対策委員会を中心に女性の活躍を推進する環境整備の一環として、企業のワーク・ライフ・バランスへの取り組み状況をまとめた事例集の作成や、待機児童の解消に向けた提言等を行っている。
    旭化成では、1990年代初め、多様な人材による強い組織を目指し、女性の活躍推進への意識が高まった。91年度から女性の総合職採用を開始し、93年度には、EO(Equal Employment Opportunity)推進室を設置、総合職採用者の女性比率を高める等の取り組みを行っている。育児休業制度をはじめ時短推進・長時間労働是正等への取り組みも積極的に継続している。管理職登用に関し、女性を優先してはいないが女性管理職の育成支援を行っている。

  3. (3)八丁地園子氏(藤田観光常務執行役員)
    仕事と育児・介護の両立は男女に共通する課題であり、誰もが働きやすい世の中にすることは成長戦略として重要。そのためには国の制度の充実に加え、企業の考え方やわれわれの常識の変化が必要である。当社は昨年3月に「ダイバーシティー推進室」を設置し多様な人材が共に働くことで多様な常識を理解し、働きやすい会社にするとともに、多様化する顧客ニーズを把握し経営戦略に反映するよう組織的に展開している。

  4. (4)片山さつき氏(総務大臣政務官)
    企業において女性管理職がなかなか増えない理由として、知識や経験の不足が挙げられている。経営者自身が、女性は難しい課題を敬遠しがちである等の先入観を持っているために、女性が必要な経験を積むチャンスが与えられないという悪循環が続いている。自分自身が、女性初の財務省主計官となったキャリアパスを踏まえれば、女性にも男性と同じように多様な職務経験を段階的に歩ませることで、管理職登用が進み、女性の活躍推進がさらに加速することが期待される。

  5. (5)阿部奈美氏(日本経済新聞社編集長)
    正社員が長時間労働で企業の競争力を高める従来モデルは限界に来ている。少子高齢化で日本の生産年齢人口は減る。そのような現実を突き付けられ、優秀な女性なら子育てしながら働き続けてもらいたいと考える企業は増えている。働きたい者が性別にかかわらず働き続けられる職場環境を整えるため企業はどうしたら良いのか。企業側と働く側、そしてマスコミもこの問題と向き合い、一緒に策を考えながら前に進もうという気持ちで紙面づくりに取り組んでいる。

2.女性活躍推進に向けた課題、克服方法

次に、女性活躍推進を阻む要因、およびその克服方法についてパネリストから意見を聞いた。

片山氏は、日本型経営の良さも確かにあるが、もう少し女性が意見を言えるようなガバナンスにすべきと問題提起した。八丁地氏は、市場で勝つためには女性の活躍が必要との納得感が組織になければ社内制度の利用も進まないと指摘した。阿部氏も同様に、社内制度は働く人と企業の意識が変わらなければ、利用されにくいと述べた。渡邉氏は、D&Iの推進には、制度面での対応も重要であるが、それ以上に「何のために」取り組むか、運用面でビジョンをしっかり示すことが必要との見解を示した。伊藤氏は、社内制度をつくっても、長時間労働が変わらなければ効果は限定的でありその改善が必要であることを指摘。また待機児童の解消に向けて、国・自治体がさらに施策を進めるべきと発言した。

3.最後に

まとめとして、阿部氏は、親の介護で今後はキャリアが途切れる男性社員の増加も予想されるとしたうえで、キャリアが途絶えがちな女性社員にとって働きやすい環境を整えることは男性社員の働きやすさにもつながると指摘した。片山氏は、女性の活躍推進がわが国の成長につながり、われわれにはフロンティアが残されていると発言した。八丁地氏は、会社に女性の活躍推進が必要と認識させるためには、女性自身が業務の実績をあげて会社に貢献することが何よりも重要であると指摘した。渡邉氏は、D&Iの推進にはトップダウンとボトムアップの融合が重要と指摘した。伊藤氏は、出産という女性にしかできない部分については、サポートする制度が必要であるが、基本的には男女関係なく、がんばる人が昇進する社会にする必要があるとの認識を示した。

【経済基盤本部】

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