Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2013年8月29日 No.3143  クロネコヤマトの「満足創造経営」-お客様の声は「宝の山」 -第6回「経団連 Power Up カレッジ」/ヤマトホールディングスの瀬戸会長が講演

講演する瀬戸会長

経団連事業サービス(米倉弘昌会長)は7月23日、東京・大手町の経団連会館で第6回「経団連 Power Up カレッジ」を開催し、ヤマトホールディングスの瀬戸薫会長から「満足創造経営」をテーマとする講演を聞いた。講演の概要は次のとおり。

■ 宅急便誕生

ヤマトグループの歴史はイノベーションの歴史である。1929年に定期定区間輸送の路線便を開拓したものの、他社の追随を受けて業績が低迷するなか、76年に宅急便事業を開始し、BtoBからCtoCへと事業構造の転換を図った。当時の個人宛小口貨物輸送は荷さばきが粗く到着時刻が不確定であるなど、運送する側の都合を優先していた。そこで(1)明快な運賃体系(2)翌日配送(3)電話1本で集荷・再配達する――という宅急便の新サービスは、徹底してお客様の立場で考え、サービスの差別化を図り、わかりやすさを追求することで生まれた。

■ 宅急便の成長と事業戦略

その後、基幹事業であった路線便から全面撤退し、宅急便事業に社業を一本化することを決定した。さらに、「全員経営」という理念のもと、セールスドライバーへの権限移譲を進め、現場のアイデアからコレクトサービス(代金引換やカード払い)やクール宅急便などの多様なサービスが生まれた。また、送り主の先にいる荷物を受け取るお客様に着目し、「時間帯お届けサービス」やセールスドライバーと直接お客様が連絡を取れる「ドライバーダイレクト」等、エンドユーザーの利便性を高めることでサービスの差別化を図っていった。同時にドライバーの集配や仕分け作業を集中的に補助する短時間勤務体制やチーム集配の導入など、作業生産性をあげることで、サービスを向上させる体制も整えた。また、すべてのクレジットカードや電子マネーで決済が可能なポータブルポスシステムをドライバーに持たせてオンラインでつなぐなど、ITによる情報武装も積極的に進めている。

現在、「DAN-TOTSU経営計画2019」のもと、これまで培った情報通信・物流システム・金融決済等の機能を融合し、新たなソリューションを生み出すことを目指している。また日本の「ものづくり」の国際競争力を高めるためには、物流改革が必要である。そこで、「バリュー・ネットワーキング」構想として、アジアをターゲットに沖縄国際物流ハブの構築や国際クール宅急便の展開を目指すほか、羽田空港に隣接し荷物の流れる過程で家電修理など付加価値をつける機能を持つ物流拠点「羽田クロノゲート」、大都市圏の当日配送を実現する「厚木ゲートウェイ」など、物流を「バリューを生み出すための手段」として進化させ、日本の一次産業に貢献していきたい。

■ お客様の声は宝の山

お客様や社員の声は新しいサービスを開発し高度化するための原動力であり、直接聞かなければわからない。社員から提案を聞く際には、(1)世のため、人のためになるか(2)オンリーワンか(3)利益を先取りしていないか――の観点から考え、顧客のメリットやコスト削減効果を具体的に数値で示すように求めている。「サービスが先、利益は後」「受け取るお客様の立場で徹底的に考える」をキーワードに、社員の声を直接聞き、アドバイスをする機会を多く持つようにしてきたし、現場からの提案がさまざまなサービスを生み出してきた。当社における「少数精鋭」は精鋭を少数揃えるということでなく、少数であるから1人が責任を持つ分野が広がり「精鋭」になるという考え方である。また、日常の業務のなかで感動体験を共有する研修、人のよいところを積極的に見つけ評価する「ほめる文化」への転換を図るなど、人材育成にも工夫をこらしている。

【経団連事業サービス】

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