Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2013年9月26日 No.3147  情報コンプライアンスとプライバシーに関する諸問題について説明を聞く -関西大学の高野教授から/企業行動委員会企画部会

説明する高野教授

経団連は10日、東京・大手町の経団連会館で、企業行動委員会企画部会(吉田豊次部会長)を開催し、関西大学社会安全学部・大学院社会安全研究科の高野一彦教授から、情報コンプライアンスとプライバシーに関する諸問題について説明を聞き、意見交換した。説明概要は次のとおり。

■ 企業を取り巻く法の変化と企業不祥事の傾向

近年の企業不祥事は、内部告発によって発覚する事案が多く、インターネット上で「炎上」し、被害が拡大する傾向がある。体力が弱い企業が廃業に追い込まれるケースも少なくない。2003年に成立した個人情報保護法をはじめ、近年成立した法律は適法・違法のグレーゾーンが広く、個々の経営判断において適法ラインにどの程度「倫理性」や「誠実性」を上乗せすべきかが重要になる。

■ 情報の不正取得における法的論点

「情報流出」は、他のリスクに比べて発生頻度が極めて高いが、現行法では情報の不正取得者に対し、刑事・民事ともに法的な制裁が及ばないケースが散見される。情報が有体物ではないため、刑法における窃盗罪などの財産犯の客体となり得ず、またコンピューターへの不正アクセス行為がないと、不正アクセス禁止法の適用もない。

営業秘密の不正取得(不当競争防止法)を問う場合には、情報にアクセスできる者を制限しているか、また情報にアクセスした者が、それが秘密であると認識できる表示があるかといった「秘密管理性」が主な争点になる。企業は名簿などの個人情報について、法的保護を受けるために営業秘密として管理せざるを得ず、これが過剰反応を招き、利活用を阻害する主たる要因になっている。

■ ソーシャルメディアのリスク管理

近年、企業の広報活動が多様化し、ツィッターやフェイスブックなどのソーシャルメディアを利用し、消費者・顧客と直接コミュニケーションを取る動きが活発化している。他方で、従業員の不適切な情報発信によって「炎上」したり、営業機密が流出したりするリスクが増大している。企業の予防策として、ソーシャルメディアの特徴とリスク、注意すべき行為などをガイドラインとして明文化し、従業員やアルバイト、内定者などに対して繰り返し教育を行う必要がある。

■ 新たな情報法制の論点

現在、政府においてパーソナルデータの利活用ルールの見直しに関する議論が進められており、利活用の促進とプライバシー保護をどのように両立するかが重要な課題となっている。またEUのプライバシー政策と比較して、日本の現行法制ではプライバシー保護が不十分と評価されており、日本企業は情報流通のためにコストと時間をかけて、特別な対応を行っている。国際的な評価を得るためには、プライバシー保護を監視し事業者の相談に乗る独立機関の設置と、データの不正取得者への罰則の規定など、グローバルに通用するルールの確立が必要となる。これらの論点は、今後の個人情報保護法の改正に反映される可能性が高く、注視が必要である。

【政治社会本部】