Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2013年10月17日 No.3150  「世界経済の動向と日本経済に与える影響」 -三菱UFJリサーチ&コンサルティングの五十嵐執行役員調査本部長から説明聞く/経済政策委員会企画部会

経団連の経済政策委員会企画部会(村岡富美雄部会長)は9月26日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの五十嵐敬喜執行役員調査本部長から、「世界経済の動向と日本経済に与える影響」をテーマに説明を聞いた。概要は次のとおり。

1.世界経済の動向について

リーマンショック後の2007年から12年までの5年間は、世界的なリスクオフの状況であった。海外資本の一部が、主として値動きが小さく流動性も高い日本の短期国債に向かい、結果として円高を招いた。しかし、昨年秋ごろから世界的なリスクオフは緩み、投資家もリスクを取って高利回りをねらう動きが少し出てきた。これが円高是正のベースにある主要な動きだ。

ユーロ圏では、南欧諸国での債務問題が大底を打った。今後は、世界経済の回復とユーロ安を背景に域外への輸出を伸ばし、景気は持ち直しに向かうとみられる。今年後半にプラス成長に転じ、来年はプラス1%程度の成長が達成できよう。ただし、内需は弱く、総じてみれば縮小均衡の状態が続くとみている。

中国は10年に10%を超える高成長を達成した後、成長率は大幅に鈍化してきたが、足もとでは、鉱工業生産をはじめとする多くの指標で持ち直しの動きがみられる。以前のような二桁成長は望めないものの、先行きは7%台程度の安定した成長を続けることが見込まれる。

米国では、サブプライム危機以降、家計において住宅ローンを中心とする債務圧縮が続き、反面、消費が停滞していた。足もとでは、債務返済が一段落し、ローンを増やす動きもみられ始めている。実質可処分所得の増加を背景に、GDPの7割を占める消費は緩やかに回復を続けている。財政部門が引き続き成長を抑制するが、今年は2%弱、来年は2%台半ばの成長が見込まれる。

2.日本経済の動向と大胆な金融緩和の評価

足もとでは、昨年来続いていた株高の動きも一段落し、株高によるマインド改善に支えられていた消費はやや下向きである。これまで製造業で正社員が削減され、非製造業で非正規雇用が増加することで、雇用者報酬総額は減少してきた。ここが増えないと、持続的な消費の増大は難しい。ただ当面は、世界経済の着実な回復が経済成長の原動力となるだろう。

安倍首相は、円高是正とデフレ脱却をねらい、大胆な金融緩和の必要性を唱えていた。しかし、実際に「量的・質的金融緩和」を始めるまでに大きく円安が進んだのに対し、緩和を続けている現在、株価や為替の方向感が失われている。これは、相場の動きがもっぱら思惑に左右されている証左である。また、物価についても、マネーが増えれば上がるという理屈があるが、欧米と比較して日本のマネーサプライは圧倒的に多いのが事実だ。デフレ脱却に必要なのはマネーの量ではなく、マネーがどれだけ頻繁に使われるかということだ。

企業は、新しい文化やライフスタイルをつくる意気込みで、消費者が買いたくなるような商品を開発し、売り上げを伸ばしていく積極的な行動を取るべきだ。

【経済政策本部】