Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2013年11月7日 No.3153  観光関連産業の成長産業化と競争力ある観光地域づくりに関する報告書を公表 -高レベルでの観光立国実現へ

経団連の観光委員会企画部会(菰田正信部会長)は、「観光関連産業の成長産業化と競争力ある観光地域づくりに関する報告書」を取りまとめ、10月30日に開催された観光委員会に報告後、インターネット等で公表した。

わが国の成長戦略の一つである観光立国の実現にあたっては、訪日プロモーション強化やビザ発給要件緩和など政府の取り組みに加え、実際に観光客に接する観光関連産業と観光客を受け入れる地域が、世界のトップクラスを目指して飛躍的な発展を遂げることが強く求められる。

そこで同部会では、2012年8月から今年6月にかけ、計12回の会合と東北地方視察を実施。有識者やシンクタンク、先進的な取り組みを進める関係業界や団体、地方自治体から話を聞き、意見交換を行ってきた。同報告書は、関係各方面における取り組みについて、「観光関連産業の成長産業化」と「競争力ある観光地域づくり」という二つの切り口から、そのエッセンスを取りまとめている。

(1)観光関連産業の成長産業化

観光関連産業が今後成長を遂げるためには、将来的な国際観光需要のさらなる取り込みを視野に入れつつも、まずはわが国の観光関連産業の事業基盤である国内市場における需要創出と業界自体の生産性向上の取り組みが必要である。

そこで報告書では、需要創出の事例として、トラベルヘルパーによるシニア層の需要の掘り起こしや若者の経済的負担の軽減によるリピーターの創出について、また、生産性向上の事例として、おもてなし強化に向けたバックヤードでの徹底した作業効率化(宿泊業)やウエディング、ハネムーンなど専門性の高いサービスへの特化や高品質な旅行商品への重点化(旅行業)などの取り組みを紹介している。

(2)競争力ある観光地域づくり

従来の地域の観光振興策では、数字でも成果がみえやすい観光振興と、数字に表しにくく時間がかかる地域づくりとが必ずしも整合的に進んでこなかった。

そこで報告書では、地域が主体的に地域内連携強化と地域間連携を進めていく必要性を指摘。「共創」をキーワードに、(1)地域情報の発信や食文化の保存のための地域食材の流通形成に向けた地域内の宿泊業者間の連携(2)地域の官民協働による独自の商品開発やブランド発信(3)大手事業者の有する独自のノウハウやネットワークを活用した観光地域づくり(4)旅行商品づくりにおける地域と消費者との連携――といった事例などを紹介。また、コラムでは、観光を切り口とした震災復興の取り組みも取り上げた。

市場は常に変化しており、またそれぞれの事業者・地域の状況や持ち味は異なる。紹介事例と同じことをすることが成功を確約するわけではないが、報告書が観光立国の担い手となる観光関連産業や地域の関係者において、新たな挑戦の後押しとなることが強く期待される。

【産業政策本部】