Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2013年12月5日 No.3157  COP19に経団連ミッション派遣 -すべての国が参加する国際枠組みの構築に向けて各国政府等に働きかけ/ポーランドのワルシャワで開催

経団連・JICA共催サイドイベントで開会あいさつする坂根副会長

ワルシャワ・ビジネス・ダイアログで説明する
手塚国際環境戦略ワーキンググループ座長

国連気候変動枠組条約第19回締約国会議(COP19)が11月11日から23日までの約2週間、予定の会期を1日延長し、ポーランドのワルシャワで開催された。経団連としては、2020年以降の世界の温室効果ガス削減にかかる将来枠組みづくりを前進させるとともに、地球規模の低炭素社会実現に向けた日本産業界の取り組みを広く国際社会に発信していくことが重要であった。そこで坂根正弘副会長を団長とし、環境安全委員会の主要メンバーによるミッションを派遣し、現地で交渉にあたった日本政府代表団や国連・各国政府等への働きかけなどを行った。

■ COP19決定の概要

今回のCOPでは、直前にフィリピンを襲った巨大台風の被害なども受け、温暖化対策等に対する先進国からの資金拠出を強硬に主張する途上国と、途上国にも温室効果ガス削減義務を課したい先進国との間の対立がこれまで以上に先鋭化した。しかし、最終日の夜から翌日の夕方まで精力的な交渉が行われた結果、2020年以降の将来枠組みの構築に向けて、一定の合意がなされた。

将来枠組みに関する最大の成果は、国際交渉により各国の削減目標をトップダウンで設定する京都議定書のようなかたちではなく、各国が自ら目標を設定するボトムアップ型へと転換が図られたことである。さらに、すべての国が自主的に削減する目標等に関する約束の草案を2015年のCOP21の相当前の時期に、特に準備可能な国については2015年3月末までに提出することが合意されたことにより、今後の具体的な道筋が明確になった。米中を含むすべての国が参加する、ボトムアップ型の枠組みの議論が前進したことは、COP19の成果であり、経済界として高く評価できるものとなった。

また、経団連がかねて要望してきた二国間オフセット制度(注1)に関しては、署名済み8カ国による会合において、各国が高い期待感を表明し、プロジェクトの強力な推進が確認されるなど、具体化に向けた進展がみられた。

(注1)二国間オフセット制度=二国間協議のもとで途上国側のニーズを十分勘案しながら省エネ・低炭素化プロジェクトを形成し、技術移転の結果として実現した排出削減の一部をわが国の貢献分として評価する仕組み

■ 経団連の現地での主な活動と具体的成果

交渉期間中、ポーランド民間経営者連盟と各国の経済団体の集合体であるBizMEF(エネルギー安全保障と気候変動に関する主要経済国ビジネスフォーラム)(注2)が官民合同の国際会議「ワルシャワ・ビジネス・ダイアログ」を共催した。初期準備から当日の運営に至るまで、経団連が全面的に関与した同会議では、国連気候変動交渉への民間産業界の関与や、技術・資金メカニズムの制度設計における官民連携の重要性について、国連関係者や各国交渉官の理解を大いに深めた。

また、石原伸晃環境大臣の出席を得て、国際協力機構(JICA)と共催したサイドイベント「地球規模の低炭素社会実現に向けた日本の技術貢献の在り方」では、日本産業界のボトムアップ型の取り組みの成果や意義等について、積極的に情報発信を行った。具体的には、日本産業界の自主行動計画による着実な成果や、低炭素社会実行計画を通じた地球規模の温室効果ガス削減に向けた取り組みを説明したうえで、2020年以降の将来枠組みについても、「各国が自国の削減目標や実行計画を策定し、進捗を国際的に測定・報告・評価する方式とすべき」という経団連の提言を紹介した。続いて、議長国ポーランドやインドネシアの政府関係者、米国産業界も交えたパネル討論では、日本の技術貢献や国際協力の具体的事例の紹介、ならびに二国間オフセット制度等をめぐる議論が行われ、温暖化対策における技術の開発・普及の重要性が強調された。

(注2)BizMEF=気候変動交渉に産業界の考え方を反映させるべく、全米商業会議所やビジネスヨーロッパなど、主要国の経済団体が参加する組織。2009年2月以降開催されてきた同フォーラムにおいて、経団連は主導的な役割を果たしてきた。BizMEFはCOP19に向け、(1)国連気候変動交渉への産業界の関与拡大(2)気候変動に関する投資・資金(3)新たな緩和策(※経団連が起案)(4)2020年以降の国際枠組み――という四つの提言を取りまとめ、国連や関係国政府等に働きかけた。

■ COP20に向けて取り組むべきこと

COP19では将来枠組み構築に向けた道筋が明確になったが、具体的な内容に関しては、今後の国連交渉に委ねられており、引き続き各国の国益や思惑が交錯する厳しい交渉が展開されることが予想される。

2014年末にペルーのリマで開催されるCOP20を見据え、経団連としては日本政府に対し、2020年の削減目標および2020年以降の中長期の削減目標に関して、現実的に設定することや、二国間オフセット制度を促進することなどを働きかけていく。

一方、低炭素社会実行計画を通じて、国内での排出削減や世界最高効率の維持を図りつつ、途上国支援や革新的技術の開発にも積極的に取り組み、地球規模での温室効果ガス削減に引き続き貢献していく必要がある。とりわけ日本企業の有する省エネ・低炭素技術を途上国に展開し、地球規模の低炭素社会の構築に向けた具体的な貢献策を着実に積み上げながら、産業界の取り組みや考え方をこれまで以上にアピールしていく。

【環境本部】