Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2014年1月9日 No.3161  目指せ健康経営/従業員の健康管理の最前線<6> -各企業・保険者の多様な取り組み

東京大学政策ビジョン研究センター健康経営研究ユニット特任助教
ヘルスケア・コミッティー会長
古井祐司

前回は、企業と医療保険者(健保組合・協会けんぽなど)が協働する「コラボ・ヘルス」が健康経営のポイントになることをご紹介しました(1月1日号参照)。今回は、職場環境を整備する具体的な工夫をご紹介します。

■ 職場環境に着目した工夫

従業員が健康でこそ良いサービスが提供できるのは、企業も医療機関も同様です。最近、医療機関でも従業員の健康づくりに積極的に取り組む動きがみられます。

医療法人財団博愛会(福岡県)では、昨年「健康経営推進室」を設置しました。これは同会が健康経営に真剣に取り組む内外への意志表示でもありますが、実際の職場環境の整備にも着手しています。例えば、同会の従業員には若年からの肥満化がみられますが、これは深夜勤務や交代制勤務などのために不規則な食生活や甘い飲み物の摂取が多いことなどが背景にあると考えられます。そこで、職場内の自動販売機に特定保健用食品(トクホ)の飲料を導入しました。トクホは値段が割高なため、その差額を「健康経営推進室」が補助するかたちで、他の飲料と同程度の値段設定にしています(写真参照)。値段が安いことで購入のインセンティブになるだけでなく、これを目にした従業員が健康を意識するきっかけになるという点でも有意義な仕組みです。また、今春には従業員向け食堂を改装し、従業員ならびに一般向けにヘルシーランチを提供する「ランチパーク」がお目見えする予定です。

同会でこうした取り組みが始まったきっかけは、昨年、医療法人として初めて日本政策投資銀行の「健康格付融資」を受けたことでした。健康格付融資とは、健康経営に積極的に取り組む企業・法人を評価し、金利優遇というインセンティブを付与する商品で、2011年春から導入されています。企業・法人の評価は、経済産業省医療・介護等関連分野における規制改革・産業創出調査研究事業「健康経営による健康・医療の産業化調査研究」の幹事機関であるヘルスケア・コミッティー社と、日本政策投資銀行、電通などの参画企業が研究開発した「健康経営の評価指標」に基づき実施されます。同会の食堂の改装も、健康格付融資を財源にして実行されます。

■ 日常の動線に働きかける

三菱電機に打ち合わせに伺った際、全社的な健康増進運動「三菱電機グループヘルスプラン21」を推進する趣旨の文字が印字された紙コップでお茶を出していただきました。また、社員食堂に向かう階段に、上った段数でどの程度のカロリーを消費するかを示すステッカーを貼付している企業もあります。このように、打ち合わせや昼食といった日常の動線に、健康を意識するような環境をつくっていくことで、従業員の意識や行動が変わりやすくなります。

小さなことにみえても、取り組みを始めた企業では例外なく次の一歩につながっており、はじめの一歩を踏み出すことの重要性がうかがえます。

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