Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2014年3月27日 No.3171  経済界と農業界との連携強化を通じた農業の成長産業化を目指して -具体事例に基づき意見を交換/農政問題委員会

農政問題委員会(小林栄三委員長、十倉雅和共同委員長)は7日、東京・大手町の経団連会館で、藤岡茂憲会長はじめ日本農業法人協会会員を招き、会合を開催した。会合には経済界、農業界から約180名が参加。経済界と農業界との連携強化を通じた農業の成長産業化に向けて、企業、農業者の代表者6名が取り組み事例を発表するとともに、意見交換を行った。発表の概要は次のとおり。

1.九州旅客鉄道

2010年に、(1)九州の基幹産業である農業を元気にする(2)美しい田園風景を守る(3)仕事の本質で農業と鉄道は通じている――の三つの動機から農業に参入。現在、社員が農場長として、生産現場に密着し、「自らつくる」を実践している。「地域との共生」を重視し、地域とのつながりで産品を選ぶなど、地元に根ざして農業に取り組み、優良農地を紹介してもらえるようになった。生産規模も1.5ヘクタールから4.5ヘクタールへと拡大。地域における好循環が生まれている。農業は裾野の広い産業であり、食だけでなく、景観や地域の文化ともつながる。農業を通じて、九州全体をアピールしていきたい。

2.損害保険ジャパン

CSRの一環として、東日本大震災を契機とした農業支援に取り組んでいる。日本農業法人協会の協力のもと、社員食堂での被災地産品を使ったメニューの提供のほか、社員による企業マルシェを開催(今年は母の日に実施予定)。また、社内イントラネットを通じた通販や顧客への贈答品にも活用している。このほか日比谷花壇と協力し、「プリザーブドフラワー・プロジェクト」を展開。被災者が製作した作品の販売を支援しており、被災地での手仕事ビジネスを創出するとともに、被災者と購入者、そしてそれを受け取る人々の心がつながるプロジェクトになっている。

3.日本電信電話

NTTグループでは、本業で培った技術を農業分野へ展開し、(1)ICTを活用した産地直販システム(NTT東日本)(2)エネルギーのみえる化技術を応用した高精度な温熱・養液管理(NTTファシリティーズ)(3)農業の匠の技能を可視化するシステム(NTTコミュニケーションズ)――をそれぞれ開発している。今後も受発注システムの電子化、PDCAツールの開発、在庫の効率化、気象情報とのリンク等が期待され、ICT技術の応用によって農業の競争力強化へ貢献したい。単体のソリューションではなく、多くの利用者を集めてクラウド化すれば、導入コストも抑制できる。

4.西部開発農産

岩手県北上市で米、小麦、大豆を中心に生産している。受託生産や利用権設定で生産規模を拡大(現在約700ヘクタール)。5年7毛作による連作障害の回避や農地の有効活用など、農地の高度利用を実現している。また、農業機械の大型化や水稲直播栽培等を通じた生産コストの低減のほか、耕作放棄地の復旧や悪条件の農地の作業受託を積極的に実施。人間は食べなければ生きていけず、食を担う「農」は不滅な産業であると考えている。この重要な役割を担っている誇りを持って、農業に取り組んでいきたい。

5.ベルグアース

愛媛県宇和島市を拠点に野菜の苗の生産販売を行っており、2年前にJASDAQに上場を果たした。「百姓でも、農業でも、田舎でもやれるぞ」という気持ちで頑張ってきた。また、「不便を便利に、不利を有利に」を信条に、不便な地域の狭い土地で生産性の向上に取り組むとともに、地域雇用の創出と正社員主義を貫いてきた。さらには、製造業のような計画的なものづくり・徹底した在庫管理にも取り組んでいる。岩手・茨城・長野・九州など全国各地や中国へも展開、進出先の地域の農業と地域全体を元気にすることを目指している。

6.さかうえ

鹿児島県で主に野菜を生産している。契約栽培により、あらかじめ決められた作物・量を計画的に生産することで、市場にあまり左右されず、ある程度リスクを確定させることができる。また、鹿児島県は畜産地帯だが、飼料のほとんどを輸入しており、これを国産に置き換えられれば、ビジネスチャンスがあると考え、トウモロコシの生産を始めた。この飼料で育った牛・豚の糞尿を肥料として畑に還元することで、循環型の農業を実現している。環境負荷を減らすかたちで農産物を生産し、採算を上げると同時に、地域の産業の成長に貢献していく。農業を通じて、地球の最適化を追求していきたい。

【産業政策本部】