Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2014年5月22日 No.3177  流通・取引慣行に関するガイドラインの見直しについて説明を聞く -根岸・甲南大学法科大学院教授から/経済法規委員会

経団連は15日、都内で経済法規委員会(奥正之委員長、大八木成男共同委員長)を開催し、根岸哲・甲南大学法科大学院教授から、流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針(以下、ガイドライン)の見直しについて説明を受けるとともに、意見交換を行った。
説明の概要は次のとおり。

1.ガイドライン見直しの必要性

ガイドラインは日米構造問題協議に対応するため、1991年に公表されたものであるが、流通慣行が公表当時から大きく変化しており見直す必要がある。

まず、ガイドラインの第1部と第3部については、背景となった企業集団内取引・系列取引の問題や内外価格差問題がすでに解消されていることから、廃止されるべきである。さらに、流通分野における取引に関する第2部については、近年、メーカーと販売業者との関係が大きく変化し、また、競争政策にかかる経済や法の理論と分析が進展しているなかで大幅な見直しが必要である。

そこで第2部のうち、特にメーカーの販売業者に対する垂直的制限(垂直的な「価格制限」である再販売価格の拘束と、垂直的な「非価格制限」である販売地域の制限等)について説明する。

2.見直しの方向性

垂直的制限が独禁法第19条で禁止する不公正な取引方法に該当するか否かを判断するにあたって、ガイドラインでは市場の画定を要せず、ブランド内の価格競争を回避する効果が認められる場合、すなわちある特定のメーカーの商品を販売する販売業者間で「当該商品の価格が維持されるおそれがある場合」に当然違法とする立場を採用している。

しかし、本来、垂直的制限が不公正な取引方法に該当するか否かの判断においては、市場を画定したうえで、当該市場において、ブランド間の価格競争の回避効果があるかなど、反競争効果と競争促進効果とを比較衡量して公正競争阻害性の有無を判断すべきである(合理の原則)。逆にいえば、当該市場において、ブランド間の価格競争が維持されている限り、垂直的制限は違法とされるべきではなく、現行のガイドラインは過剰に規制をしている。

この点について判例は、再販売価格の拘束は、ブランド内の価格競争の回避効果が認められれば不公正な取引方法として当然に違法であるとし、仮にブランド間競争を促進する効果があり得るとしても考慮に値しないとしているが、これは一つの事例判断にとどまり一般化すべきではなく、公正取引委員会は本来のあるべき解釈に立って、ガイドラインを見直すべきである。

なお、再販売価格の拘束について、独禁法第23条2項2号が「当該商品について自由な競争が行われていること」を要件に適用除外を定めていることについては、ブランド間の自由な競争が行われている場合には本来、独禁法に違反しないという当然のことを確認したにすぎない確認的な適用除外ととらえることが可能である。

【経済基盤本部】