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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2014年5月22日 No.3177 英国における社会貢献事業の価値評価と社会的投資の動向を聞く -社会貢献担当者懇談会

講演する伊藤氏

経団連は4月21日、東京・大手町の経団連会館で社会貢献担当者懇談会(小川理子座長、金田晃一座長)を開催した。慶應義塾大学特任助教でSROIネットワークジャパン代表理事の伊藤健氏から、英国における社会的事業の価値評価と社会的投資の状況について説明を受けるとともに、意見交換を行った。
説明の概要は次のとおり。

■ 社会投資収益率(SROI)

企業が社会貢献活動を行うにあたって、どのような分野に注力すべきかを判断したり、既存のプログラムを改善し発展させるために検討したりする際には、プログラムのインパクト評価が重要となる。プログラムの価値を左右する社会的インパクトの測定は、一般に難しいものとされているが、評価に使う指標の選択を工夫すれば、定量的な評価も可能である。

社会的インパクトを貨幣価値に換算し、投資対効果を測定する考え方として、社会投資収益率(SROI)の概念がある。SROIは米国で発祥し、英国の内閣府が標準化とガイドライン整備を進めてきた。SROIは定量的な評価手法であるため、助成者が助成先を審査する際の基準にも利用可能である。SROIを導入しているオランダの財団では、単純にSROIの値の高低だけで助成先を決めているわけではなく、助成先の担当者との面接を経て、組織のポテンシャルも加味して審査を行っている。

■ ソーシャルインパクトボンド(SIB)

SROIと投資とを組み合わせた官民連携での投資手法に、ソーシャルインパクトボンド(SIB)がある。英国のSIBでは、行政がもともと行っていた社会福祉事業を民間NPOや社会的企業に委託して、その当初の事業費を投資家から募る。事業が効果をあげ、福祉支出のような行政コストが削減されるようになると、削減されたコストを原資に投資家への償還を行う仕組みだ。特に、元受刑者やホームレスの社会復帰のように、予防的な措置を行うプログラムで導入されている。

これにより行政コストが下がるだけではなく、業務の民間委託によって、民間の先進的なサービスを提供することができる。さらに、行政が行ううえでの制約から自由になって裁量ある支援が可能となり、サービス効率が向上することで受益者にとってもメリットがある。SIBは英国以外にもアメリカやオーストラリアでも導入実績があり、日本でも導入への取り組みを進めているところだ。

SROIやSIBの仕組みをつくるにあたっては、基準づくりのノウハウやリソースがある民間セクターへの期待が大きい。また、民間セクターでは成果報告など社会とコミュニケーションをする必要があり、SROIに対する需要が高まっている。

◇◇◇

意見交換において、会社へのインパクト測定に関する視点をどのように考えるかとの質問に対し、社会貢献活動参加で社員の満足が高まれば人材確保につながるので、そういった観点からの価値の測定が考えられるとの回答があった。

【政治社会本部】

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