Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2014年7月17日 No.3185  平成26年度財政検証のポイントと制度改正に向けた論点〈上〉 -公的年金の仕組みの再確認

経団連の社会保障委員会年金改革部会(柿木厚司部会長)は6月26日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、ニッセイ基礎研究所の中嶋邦夫主任研究員から、「平成26年度財政検証のポイントと制度改正に向けた論点」をテーマに説明を聞いた。今号から3回に分けてその内容を紹介する。

1.年金問題の整理方法

年金問題は、年金記録問題をはじめとする制度運営の問題と制度設計の問題とに整理できる。さらに制度設計の問題は、世代内の不公平感というヨコの問題と、年金財政や世代間問題というタテの問題に分けられる。今回は、制度設計の問題について説明する。

年金財政の収入は、保険料(加入者数×1人当たり保険料)+運用収入+国庫負担、支出は受給者数×1人当たり年金額で表される。したがって、年金財政をバランスするには、収入側の(1)加入対象(2)保険料率(3)国庫負担割合、または、支出側の(1)支給開始年齢(2)物価や賃金によるスライド率(3)給付乗率――のいずれかを調整することで対応しなければならない。

2.2004年改正のポイント

2004年以前の公的年金は、給付水準を先に決め、保険料率を段階的に引き上げることで財政上必要とされる収入を確保し、現役または将来の被保険者に負担を先送りしていた。これに対し04年改正では、基礎年金給付費の国庫負担を3分の1から2分の1に引き上げるとともに、保険料水準の上限を定め、収入のなかで給付を調整する仕組みとした。給付削減は、現役または将来の被保険者だけでなく、現在の受給者も痛みを共有することになるので、世代間問題という観点からも有用である。

給付削減は、公的年金加入者数の減少率と平均余命の伸びの分だけ本来の給付額を抑制する「マクロ経済スライド」を通して行われる。ただし、「厚生年金に40年間加入する夫と専業主婦の妻」というモデル世帯の所得代替率(公的年金の給付額が現役世代の平均収入の何割かを示す)が50%を下回らないようにするという給付水準の下限が設定されている。

なお、マクロ経済スライドによる給付削減の期間は、基礎年金(1階部分)、厚生年金(2階部分)の順に決定する仕組みとなっている。国民年金の財政バランスを維持できることが前提となるため、基礎年金部分の削減幅の方が大きい。基礎年金の所得代替率低下は、特に低所得者に影響が大きく、制度改正議論でも主要な論点となろう。

次回は「検証結果のポイント」を解説する。

【経済政策本部】


平成26年度財政検証のポイントと制度改正に向けた論点

  1. 公的年金の仕組みの再確認
  2. 検証結果のポイント
  3. 課題と選択肢