Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2014年8月7日 No.3188  わが国の防衛産業をめぐる課題聞く -2014年度防衛生産委員会総会

経団連は7月28日、東京・大手町の経団連会館で防衛生産委員会(大宮英明委員長)の2014年度総会を開催し、13年度の活動や収支決算、14年度の活動計画や収支予算の報告、役員の改選等の承認が行われた。続いて、桃山学院大学法学部の松村昌廣教授から、わが国の防衛産業をめぐる課題について講演を聞いた。講演の概要は次のとおり。

■ 調達改革や技術移転等の課題

今年4月に武器輸出三原則が見直され、防衛装備移転三原則が策定されたが、防衛産業が価格の国際競争力を向上させないと、防衛装備品の輸出はできないと考えている。

また、わが国には実戦での実績とデータがないという弱みがある。さらに、海外の技術のブラックボックス化が進んだことから、技術の取得が容易ではなくなっている。

政府の調達計画の変更によって、企業への支払いが当初期待されたほど円滑には行われないといった問題が起きている。そのため、防衛産業は短中期的に高い利益を上げられない状況である。

そこで、まずは政府が調達改革を進める必要がある。防衛・軍事戦略において、陸海空のなかで海と空を重視する選択と集中を進めるべきである。また、海外の調達制度を形式的に導入しても成功しないだろう。そこで契約期間を最長5年と定めた財政法の改正や、防衛省の装備調達組織の強化等が必要となってくる。

次に、技術移転について、防衛装備品の国際共同開発に参画するには、日本が提供できる優位な技術がなければいけない。日本が比較的優位なのは、電子サブシステム、部品素材である。

実務上の課題としては、防衛装備移転の法的枠組みをつくらなければいけない。政府間で覚書を作成し、これに沿って知的所有権を保護するための企業間契約のひな型をつくる必要がある。

■ 国際共同開発の課題

中長期的には、防衛装備品輸出を日本の防衛産業を支える重要な柱の一つとすべきである。そのために次の3点を提案したい。

第一に、ミサイルシステムや戦闘機など主要な兵器システムについては、米国を中心とした共同開発に日本が参加して、サブシステム、部品、素材などを提供するかたちは維持すべきである。

第二に、ヘリコプターや無人機など周辺的な兵器システムについては、ヨーロッパと共同開発し、システムインテグレーション技術を学ぶ必要がある。

第三に、米国の兵器などの維持と整備について、日本において着実に実行する必要がある。これらにより、防衛産業は利潤を確保することができる。

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総会終了後、懇親会が開催され、防衛生産委員会のメンバー、来日中であったジャン=イヴ・ルドリアン・フランス国防大臣、若宮健嗣防衛大臣政務官をはじめ国会議員、政府関係者、有識者など約210名が参加した。

【産業技術本部】