Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2014年10月9日 No.3195  「人口減少が産業・雇用に与える影響」で説明を聞く -日本経済研究センターの桑原主査から/経済政策委員会企画部会

経団連の経済政策委員会企画部会(橋本法知部会長)は8月20日と9月26日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、日本経済研究センターの桑原進中期予測班主査から、「人口減少が産業・雇用に与える影響」をテーマに説明を聞いた。概要は次のとおり。

1.問題意識

今後日本は、人口だけでなく資本ストックまでもが減少・高齢化することが見込まれている。労働力人口や資本ストックの減少は、潜在成長率の低下をもたらす。

他方、財政赤字も深刻である。現在、国の歳出のうち税収は半分程度にすぎず、残りは公債発行で賄っている。公債発行分を消費税収で賄おうとすれば、消費税率を15%以上まで引き上げないとならない計算となる。

今後の少子高齢化の進行を踏まえれば、さらなる消費増税は避けられない。そこで日本経済研究センターでは、2025年度までのマクロ経済予測を行い、わが国経済は消費税率の引き上げに耐えられる基礎体力があるのかを検証した。

2.予測結果

消費税率を10%で据え置いた場合、国・地方の基礎的財政収支は、マイナス3%程度で推移し、財政破綻は避けられない。17年度から25年度にかけ1%ずつ、19%まで引き上げて初めて、25年までに黒字化することが可能となる。この時、実質成長率は0.9%程度で推移し、経常収支も大きく悪化することは避けられる。政府債務残高対名目GDP比も安定に向かうが、長期的に安定させるためには、30年にかけて消費税率を25%まで引き上げることが必要である。

3.産業予測

マクロ経済予測をベースに、産業連関表を用いて産業予測を行った。その結果、今後の生産を支えるのは輸送・一般機械であることが明らかとなった。少子高齢化に伴い、医療・介護も成長にプラス寄与となるが、総人口が減少するため対個人サービスの産業は縮小していく。

雇用を支えていくのも、医療・介護となる。資本ストックの維持や住宅メンテナンス等で需要のある建設もプラス寄与となることが見込まれる。他方、小売や卸での大幅減は避けられない。

需要予測では、工業用ガスや化学、鉄鋼といったBtoBや、輸出が期待できる産業が日本経済を牽引していくとの結果となった。特に自動車は新型自動車の開発等で大きな輸出増が望めるだろう。

4.地域予測

各地域の産業分布に産業予測を反映し、地域予測を行った。高成長を遂げる上位3県は、三重、愛知、石川である。「輸送機械」や「半導体・電子・電気機器」といった高成長が見込まれる産業のウエートが大きい都道府県の成長が高くなるという結果となった。全国の成長を牽引するのは、東京と愛知。雇用の減少率が小さいのは、東京、石川、神奈川である。ただし、生産性の伸びが低い方が、雇用の減少率が小さくなることに注意が必要である。

今後は労働需要が労働供給を上回り、労働需給が逼迫する地域が続出する。例えば、秋田は介護人材中心に大きく供給不足となるだろう。

※各予測の詳細は http://www.jcer.or.jp/research/middle/ 参照

【経済政策本部】