Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2014年10月16日 No.3196  「人口減少下の日本経済」 -法政大学大学院の小峰教授から聞く/経済政策委員会

経団連の経済政策委員会(岡本圀衞委員長、上釜健宏共同委員長)は6日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、法政大学大学院政策創造研究科の小峰隆夫教授(日本経済研究センター研究顧問、21世紀政策研究所研究主幹)から、「人口減少下の日本経済」をテーマに説明を聞いた。概要は次のとおり。

1.人口問題の克服は日本の世界史的役割

日本は、生産年齢人口比率が低下する「人口オーナス」の段階にある。国連の調査によれば、日本は2050年に世界一の人口オーナス国家になる見込みである。しかし、人口オーナスへの対応は遅れているといわざるを得ない。このままでは日本は“become history”、衰退して過去の国となってしまうが、“make history”、すなわち人口問題を乗り越え、歴史をつくっていくべきである。それが日本の世界史的役割だと考える。

2.実効性のある少子化対策のあり方

少子化を止めることは可能である。フランスやスウェーデンなど、一度低下した出生率を2.0近くに回復した国もある。

日本の出生率低下の主因は、未婚率の上昇と晩婚化の進展である。若年層の経済基盤や雇用の場を整えるとともに、社会全体で結婚にフレンドリーな環境を整備することで、婚姻件数を増やすことができる。

経済学的観点からすると、先進国で出生率が低くなる主因は子育てコストの上昇にある。男女共同参画社会のもとで、女性が高いレベルの教育を受け、男性と同様に働くようになったため、子育ての機会費用が高まったのである。したがって、出生率を引き上げるためには、家事・育児と仕事を両立しやすい環境をつくり、子育てコストを下げることが最重要である。雇用慣行も、職務を中心にキャリア形成が行われていくジョブ型雇用に転換すべきである。いったん労働市場から退出した女性の再参入コストが下がるほか、長時間労働も是正されることから、男性の家事・育児参加の増加も期待できる。

3.人口オーナス下の日本経済

人口減少で国内市場は縮むといわれるが、これは疑わしい議論である。縮むと思われてしまう理由の一つに、確実性と不確実性の錯覚がある。人口減少という確実な要素が大きくみえてしまい、不確実な市場拡大要因がみえにくくなってしまうのである。企業はイノベーションを通じて、「今は不確実であるが、伸びるもの」を探さねばならない。

4.地方創生をどう図るか

東京一極集中の是正論には疑問がある。地方創生を進め、出生率の低い東京から、出生率の高い地方に人を戻すべきとされるが、怪しい議論である。大都市圏で出生率を上げることの方が、効率が良い。また、東京から地方に人口を戻したとしても、生まれた子どもが成人して、東京に出てしまっては同じことになる。今の大都市圏は将来の地方の姿ともいえる。都市型の対策を考えるべきだ。

今後の地域政策は、パラダイム転換を図る必要がある。地方主導で、地域資源を活かした個性的な発展を目指すべきである。

【経済政策本部】