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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2014年10月30日 No.3198 わが国のマネーロンダリング・テロ資金対策の推進に向けた取り組みを聞く -財務省の可部審議官から/金融制度委員会

経団連は15日、東京・大手町の経団連会館で金融制度委員会(奥正之委員長)を開催し、財務省の可部哲生審議官(国際局担当)から、わが国のマネーロンダリング(以下、マネロン)・テロ資金対策の推進に向けた取り組みについて説明を聞くとともに意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。

1.これまでの経緯

マネロンやテロ資金供与対策に関する国際協力を推進する政府間会合「金融活動作業部会」(FATF)(注)では、各国が遵守すべき国際標準(FATF勧告)を策定し、参加国における勧告の遵守状況を監視するための相互審査を実施している。

こうしたなか、今年6月にFATFは、わが国のマネロン・テロ資金供与対策に深刻な不備があるとして迅速な対処を求める声明を公表した。仮に、今後必要な法令整備がなされない場合、わが国がマネロン・テロ資金供与対策のハイリスク国としてFATFに国名を公表される可能性が高い。

そこで、政府は今月10日、犯罪収益移転防止法改正法案および、国際テロリストの財産凍結法案を閣議決定し国会に提出した。

(注)金融活動作業部会(FATF:Financial Action Task Force)=わが国を含め34の国・地域および2国際機関が参加

2.法案の概要

  1. (1)犯罪収益移転防止法改正法案
    改正法案では、国家公安委員会が銀行取引等の種別ごとに、マネロンに悪用されるリスクの程度等の調査分析の結果を記載した調査書を作成・公表することを定め、銀行等が疑わしい取引であるか否かを判断する方法の明確化を図ることとしている。
    一方、例えば実務負担を軽減するため、10万円を超える公共料金・大学の入学金の現金振込等のマネロンに悪用されるリスクが低い取引については、取引時確認や確認記録の作成等の手続を簡素化する方針である。
    また改正法案では、邦銀が海外の銀行との間で、為替業務の代行に関するコルレス契約を締結する際、相手方の銀行がマネロン対策を適切に行っているか否か確認を行うよう求めている。さらに、銀行等における顧客管理措置の実施に関する内部規程の策定、顧客管理措置の責任者の選定等、事業者が行う体制整備に関して努力義務が拡充されている。

  2. (2)国際テロリストの財産凍結法(新法)
    現在わが国では、国内居住者から海外の国際テロリストへの送金等については外為法により規制されているが、国際テロリストが国内に居住していた場合、国内居住者との間の取引は規制されていない。そこで新法を制定し、国内に居住する国際テロリストへの贈与・貸付、預貯金の払い戻し等については許可制とするとともに、違反した場合の罰則を設けることとしている。また、国際テロリストの財産については、都道府県の公安委員会に財産の一部の提出命令等を行う権限を付与することとしている。

◇◇◇

FATFによりハイリスク国として指定された場合には、金融機関への影響のみならず、各種確認手続の強化により海外送金の遅れが生じ、事業活動が停滞する等の懸念があることから、経団連は今月6日、政府に対し両法案を今臨時国会で早期に成立させるよう求める会長コメントを公表している。一方で、リスク管理強化による手続負担等実務への影響について、法案成立後は事業者への過度な負担が生じないよう配慮がなされることが期待される。

【経済基盤本部】

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