Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2014年11月6日 No.3199  人口減少社会における地域経済活性化めぐり懇談 -地域活性化懇談会を開催

講演する増田氏

安倍改造内閣は、地方創生を最重要課題として掲げ、「まち・ひと・しごと創生本部」を設置し、年内にも人口減少社会における長期ビジョンと総合戦略を取りまとめることとしている。このような状況を踏まえ、経団連(榊原定征会長)は10月23日、東京・大手町の経団連会館で道州制推進委員会、産業問題委員会、観光委員会など関係する委員会の連携のもと、地域活性化懇談会(座長=畔柳信雄副会長・道州制推進委員長)を開催した。会合では日本創成会議座長・東京大学公共政策大学院客員教授の増田寛也氏から、人口減少社会における地域経済活性化のあり方について説明を聞くとともに、種々懇談した。

■ 人口減少の課題

冒頭、増田氏は、「わが国では当分の間、人口減少は避けられない。その一番の問題は、人口が減り続ける状態になっていること。人口減少を食い止めるため、総合的な対策を実行し続ける必要がある」と人口減少に関する問題意識を提示。すでに全国自治体の44%が老年人口維持・微減および生産・年少人口減少の段階に入るなか(図表1参照)、「人口減少に歯止めをかけるためには、その要因である20~39歳の若年女性の減少と地方から大都市圏(特に出生率の低い東京圏)への若者の流出への二つの対策を同時に行うことが必要」と強調した。

また、増田氏は、「長期的には出生率を2025年に1.8、35年に2.1に改善することができれば、日本の人口は1億人弱の水準で安定し、高齢化率も26.7%程度に収まり、今まで世界中の国ができなかった人口の若返りが果たせる。東京圏における晩婚化・晩産化の傾向が全国平均より高いことが課題」と指摘。また東京への転入超過については、「日本の全人口に占める東京の人口の割合は欧米先進諸国の主要都市と比較しても極めて高く、しかもこの割合は増加の一途をたどっている(図表2参照)。転入の大半は大卒就職時(20~24歳)、大学進学時(15~19歳)に生じている」ことが大きな課題だとした。

図表1 2010年の人口を100として各年の推計値を指数化 図表2 主要都市人口が全人口に占める割合

■ 少子化対策と東京一極集中の抑制が重要

これらの課題解決にあたっては、まず「国民が望む『希望出生率』を1.8と仮定し、その実現を目標に若者が家庭を持ちやすい環境づくりに向け、雇用・収入の安定と子育て支援や男性の育児参画促進等の支援が必要」と指摘。また、「若者の大都市への流出による東京一極集中の抑制には、グローバルにおける東京の競争力を弱めることなく、地域資源を活かした産業の創出、自治体間の地域連携、地方大学の再編強化等、若者にとって魅力ある地方とするために、地域拠点都市へ集中して投資と施策を講じることが重要」と訴えた。

<懇談>

その後の懇談では、「どのような優先順位でこれらの課題に取り組むべきか」との質問に対し、増田氏は「人の流れを変えることに早急に取り組む必要がある。人が集まる場ができれば、サービス産業も出てくる可能性がある」と述べた。また、「人口減少によるメリットも示さないと新しい動きが出てこないのではないか」との質問に対し、増田氏は「人口減少には環境がよくなる、食料問題が改善するといったメリットもあろう。質問に関連しコンパクトシティ化は、単に中心部に施設を集めるだけでは意味がなく、人が集まる場をつくることが必要」と指摘した。

【産業政策本部】