Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2014年11月13日 No.3200  今後の宇宙政策のビジョンと課題聞く -東京大学大学院工学系研究科の中須賀真一教授から/宇宙開発利用推進委員会

経団連は10月27日、東京・大手町の経団連会館で宇宙開発利用推進委員会(下村節宏委員長)を開催した。政府の宇宙基本計画を策定している宇宙政策委員会基本政策部会の部会長である東京大学大学院工学系研究科の中須賀真一教授から、今後の宇宙政策のビジョンと課題について説明を聞くとともに意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。

■ 宇宙を取り巻く状況変化

宇宙を取り巻く状況として、第一に、安全保障に宇宙を積極的に利用する必要性が高まったことがある。昨年12月に政府が策定した国家安全保障戦略では、宇宙が重要な項目として取り上げられた。米国は日本との宇宙協力に強い関心を示している。

第二に、宇宙産業の停滞という課題がある。例えば2018年以降に開発を開始予定の衛星が一つもない。また、単年度の計画だけであり、長期的な計画がなければ、企業が設備・人員の投資計画を立てられない。

こうしたなか、安倍晋三首相は9月に、新たな安全保障政策を反映し、宇宙産業基盤を強化するため、10年間の長期整備計画として年末までに新たな宇宙基本計画を策定する指示を出した。

■ 安全保障関連の宇宙政策

安全保障政策を確実に遂行するためには、(1)情報収集衛星の能力向上(2)宇宙状況監視や海洋監視における日米の連携強化(3)アジアなどの各国との協力体制の構築――などが必要である。加えて、政府の宇宙政策委員会は、緊急に打ち上げられ、特定の場所を観測できる短寿命の即応型小型衛星を新たに提案している。

■ 社会インフラとしての衛星やロケット

計画策定にあたり、第一に測位分野では、準天頂衛星の4機体制の確実な実現と7機体制の実現時期の明確化が必要である。

第二にリモートセンシング(観測)分野では、情報収集衛星の機数を増やして安全保障上のニーズに対応することや、官民で使える光学衛星とレーダー衛星のシリーズ化が求められる。

第三に通信放送分野は宇宙開発利用の市場の8割を占めており、この分野にかかわる企業の国際競争力を強化する施策を実施すべきである。

第四に宇宙輸送分野では、新型基幹ロケットの20年度末までの初号機の打ち上げや、イプシロンロケットの高度化を実施する必要がある。

■ 宇宙政策の体制

今後は、海外の調査・分析や戦略を立案する機能を強化する必要がある。民間企業の参入の促進に向けて、宇宙活動法などの法制度の整備も求められる。

国際社会における連携や協力も重要であり、宇宙空間における法の支配の実現に向け、日本がリーダーシップを発揮すべきである。また、宇宙を利用する国が増えていることへの対応として、新興国市場に進出する戦略が必要である。

【産業技術本部】