Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2014年12月18日 No.3205  「日米中関係の展望と日本企業の課題」聞く -雇用委員会国際労働部会

経団連は4日、東京・大手町の経団連会館で雇用委員会国際労働部会(谷川和生部会長)を開催し、キヤノングローバル戦略研究所の瀬口清之研究主幹から「日米中関係の展望と日本企業の課題」について講演を聞いた。
講演の概要は次のとおり。

■ 「政冷経熱」から「政涼経温」の時代へ

中国に関する日本国内の報道にはバイアスがかかっている。不動産バブル崩壊や経済失速のようなネガティブな報道が多いが、実際の中国経済は安定している。2桁成長には戻らないが2020年ごろまで6~7%程度の経済成長が続く見込みである。

05年以前は「政冷経熱」と呼ばれ、安くて豊富な労働力を活用すれば、生産拠点としての中国において、どの日本企業にも収益拡大のチャンスがあった。10年以降は、市場としての中国が注目されるようになった。世界の一流企業が中国市場でしのぎを削っているため、勝てるのは日本企業の上位1~2割のみである。このため今後は「経熱」ではなく、「政涼経温」の時代になる。

日本企業の潜在的顧客となりうる1人当たりGDPが1万ドルを超える都市人口は、13年に3億人に達し、20年には7~8億人に達する。20年前後には都市化の勢いが衰え、インフラ建設が減速し、労働力人口の減少が加速するため、高度成長が終了する。20年ごろまでの中国市場は、日本企業にとって二度とないビッグチャンスである。

■ 組織変革と中国人リーダー育成が重要

中国ビジネスの成功には、中国市場を理解し迅速に意思決定できる有能な中国人リーダーの活用が不可欠である。同時に、本社組織を事業部制からエリア制に移行し、人事評価の基準も改める必要がある。中国人リーダーの下では日本語能力や日本型根回しは不要になる。エリア制への移行には企業トップによる決断が必要である。企業トップが的確な経営判断を下すには、年に数回以上中国を訪問し、変化の速い中国の実情を十分把握しておくことが必須である。

最後に、日米の防衛協力をしっかりと行い、豪州やフィリピンとも連携して軍事的優位を保ち、中国につけ入る余地を与えないことも、不測の事態を防ぐために重要である。

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中国の労務問題に関する会員企業の報告があり、これを受けて瀬口氏は、日本企業には(1)総経理が核となって従業員とのコミュニケーションを推進すること(2)現地トップに権限委譲し、労使交渉で直ちに回答できるようにすること(3)中国人リーダーを育成し、トップにすること(4)日本人駐在員が現地従業員と交流し、現地のために働いている姿勢を見せること(5)健全な労働組合が設立される環境を整備すること――などの取り組みが求められると述べた。

【国際協力本部】