Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2015年2月5日 No.3210  在ロシア日本センター所長との懇談会開催 -各地域の政治経済情勢と日本企業への期待など聞く/日本ロシア経済委員会

経団連の日本ロシア経済委員会(佐々木則夫委員長)は1月16日、東京・大手町の経団連会館で日本政府が日露経済交流促進を目的として、ロシア国内6カ所に設置する日本センターの各所長との懇談会を開催し、任地の政治経済情勢の現状や日本企業への期待等について説明を聞いた。各センター所長の説明概要は次のとおり。

■ 浜野道博モスクワ国立大学内所長

ロシアの国家歳入に占める石油・天然ガスの輸出税の割合が大きいため、原油価格の下落に伴い税収は減少する。ロシア国内では、経済危機から脱却すべく3800億ドルもの外貨準備金を活用し、財政出動をすべきとの声が高まっているが、クリミアの再開発・維持や難民の生活保障、極東開発の巨額の支出は持続的なものではない。このように、明るい材料がないなかでも日本企業は引き続き事業展開を行っており、撤退の動きなどはみられない。

■ 松原斉サンクトペテルブルク所長

当地域には自動車関連産業を中心として、58の日系企業が進出している。当センターでは、医療および観光の分野における日露交流の促進に向けて、メディカルツーリズムの企画や和食の浸透などに取り組んでいる。また、生産効率や顧客満足、日露合弁企業設立の経験などをテーマとしたロシアのビジネスパーソン向けのセミナーを精力的に開催している。

■ 佐竹昭彦ニジニー・ノヴゴロド所長

当地域最大の工業都市トリヤッチには、日本企業を含め多くの外資自動車メーカーが進出している。当センターでは、進出日系企業が税制面において優遇措置を受けられるよう、行政府との調整を仲介しているが、欧州との貿易量の大幅減に伴い、物流関連企業はアジアにシフトしはじめているのが現状である。

■ 鏡芳和ハバロフスク所長

ハバロフスクの南部では高層住宅建設が進んでいるが、中心部の開発は遅れている。当地域の人口が約60万人と少ないことに加え、中小企業が太宗を占めることから、日本企業の進出状況ははかばかしくない。日露交流促進の観点からも、新たな事業機会を発見すべく、当地を訪問いただきたい。

■ 河原和尊ウラジオストク所長

当地域には36の日本企業が進出しているが、そのうち3分の1は日本人駐在員がなく、ローカルスタッフのみである。2012年にウラジオストクでAPECが開催された後も、引き続き投資は拡大傾向にある。また、極東沿海地方の人口は減少傾向にあるが、ロシア政府は極東をアジア太平洋への窓口とすべく、投資誘致に注力している。

■ 山本博志サハリン所長

エネルギー資源開発を行う企業からの税収により、サハリン州政府の財政は健全である。潤沢な財源は今後、道路整備や住宅建設などに充当される見通しであることから、当地域は大きく変貌する可能性がある。ただし、日露貿易の約2割がサハリンとの取引であるにもかかわらず、日本企業の進出状況はそれに見合ったものではない。公共事業への投資の拡大が見込まれるなか、日本企業の参画に期待したい。

(左から)河原所長、佐竹所長、浜野所長、松原所長、鏡所長、山本所長

【国際経済本部】