Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2015年5月7日 No.3222  グローバル食料安全保障における持続可能な取り組み -ダボー・ピスク・シンジェンタCOOが講演

ピスクCOO

ロートン・アジア太平洋地域
リージョナル・ディレクター

経団連は4月17日、東京・大手町の経団連会館でダボー・ピスク・シンジェンタ最高執行責任者(COO)・クロップライフ・インターナショナル・ディレクターを招き、「グローバル食料安全保障における持続可能な取り組み」について説明を聞いた。ピスク氏は、世界経済フォーラムにおいてアジア全域の農村地域の繁栄を目指す「グローバルアジア・イニシアティブ」に関与するなど、グローバル化が進む農業の現状と課題に造詣が深いことから、来日を機に会合を開催したもの。約130名が参加した。

ピスク氏はまず、世界の農業を取り巻く課題について、「世界人口の増大および1人当たり消費カロリーの増加により、食料需要は拡大。一方、供給面では、農地の減少、水資源の制約、労働力の不足等の問題があり、今後需給ギャップの拡大が懸念される」と指摘した。そのうえで、グローバルな課題解決に向けて必要な取り組みを提示。「世界の食料需給ギャップを埋めるためには、最先端の技術を活用することで、大規模生産者のみならず、世界の大多数を占める小規模生産者の生産性向上が重要。特に、灌漑・灌水技術を含む機械科学、肥料・栄養・土壌科学、作物保護(農薬)科学、植物・種子科学(交配・遺伝子)の4分野の発展が不可欠」と言及した。さらに企業に対しても、「今後農業分野で成功するためには、生産性の向上と持続可能性の両立がカギ」と述べた。

続いて、ティナ・ロートン・シンジェンタ・アジア太平洋地域リージョナル・ディレクターが、アジア太平洋地域における農業の現状・課題等について説明。「持続的な食料供給を確保するためには、最新技術の開発やフードバリューチェーンの構築、マーケティング、農作業の安全性確保等に関して、従来の枠を超えてコラボレーションを促し、画期的なアイデアを創出していくことが求められる」と指摘した。

講演後の懇談では、「日本の農業の課題は何か」との質問に対し、ピスク氏は、「日本は最先端の技術を持つなど、世界の農業のモデルとなる可能性を秘めている。ただ、これまで小規模農家の経営を守ることに集中してきたため、非効率な面も多い。こうした状況を改善し、日本農業のブランド力の強さを示してほしい」と答えた。

【産業政策本部】