Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2015年5月21日 No.3224  人口移動と地方都市の持続性向上のために必要な政策聞く -都市・地域政策委員会企画部会

経団連の都市・地域政策委員会(山口昌紀共同委員長、菰田正信共同委員長)では、産業活性化と一体性を持った都市政策の展開に向けて、今秋を目途に提言を取りまとめることとしている。  この一環として4月22日、東京・大手町の経団連会館で、都市・地域政策委員会企画部会(外池廉太郎部会長)を開催し、日本総合研究所の藤波匠主任研究員から、今後の議論の前提となる人口の分布やその要因、および世代別の移動・集積状況や地方都市の持続性向上のために必要な政策について説明を聞くとともに意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。

■ 東京一極集中と地方創生―東京一極集中とは言い切れず

ここ数年、「東京一極集中」という考え方が注目され、この是正策が取られているが、データに基づいた冷静な議論が必要である。

例えば、東京圏(東京都・千葉県・埼玉県・神奈川県)には足もとで年間約11万人弱の人口流入があるが、これを是正する必要性とその社会的コストについてはあらためて考えるべきだろう。

これまでの東京圏の転入超過数と公共事業費の相関をみると、地方に人を誘導するには公共事業が効果的だったことがわかる。しかし、その効果は一過性であり、補助金で地方の人口流出を押しとどめるのではなく、着実な産業育成、持続的な雇用、暮らしの快適性向上など、地道な努力が必要である。

■ 若者はどこにいるのか

全国における団塊世代人口を1とすると、20歳代前半は男性で0.66、女性で0.62になる。これを都道府県別・都市別で比較すると、東京圏や地方の県庁所在地よりも、仙台市や福岡市などの中枢都市の方が、両世代がほぼ同割合で居住しておりバランスがよい。また、人口流出の大きい県においても、県庁所在地には一定の人口集積があることがわかる。

■ 地方における居住エリアの変遷―都市の郊外化と「新僻地集落」の形成

一定の人口集積がある地方の県庁所在地クラスの都市では、中心部の郊外で人口が増え、ドーナツ化現象が進んでいることに加え、二地域居住の流行などにより、郊外の森や畑を宅地化した「新僻地」が増えている。郊外の新興住宅地は世代を問わない魅力を持っており、世論調査の結果をみても、集約化による生活に必要なインフラの充実は、中心部への移住を促進する手段として必ずしも十分ではない。

■ 今後の都市政策―都市面積拡大の抑制と4つのイノベーション

都市面積の拡大を抑制するには、都市計画・立地適正化計画の運用範囲を広げ、農地転用による郊外への新規住宅拡大を制限することが望ましい。

また、人口減少・人口密度の低下を前提とした都市づくりも必要である。具体的には、(1)既存の民間インフラを公的利用する官民連携(2)民間活用による住民サービス提供側の進化(3)道路と交通の一体的運営(4)ICTやロボット等最新技術の導入――が挙げられる。

<意見交換>

委員からは、「世代バランスのよい都市の特徴を考えれば、地方に人を戻すためには、教育施設や就職先を充実させることが重要」「各都市がその特徴を活かしたグランドデザインを描くべきであり、その作成段階から民間の知恵を借りるべき」との発言があった。

【産業政策本部】