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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2015年10月22日 No.3243 CSRの位置づけと動向を聞く -企業行動・CSR委員会

説明する河口氏

経団連は9月29日、東京・大手町の経団連会館で約200名が出席し企業行動・CSR委員会(佐藤正敏委員長、三宅占二委員長)を開催した。大和総研主席研究員の河口真理子氏から、CSRの位置づけと関連の動向、今後の期待などについて説明を受けるとともに、意見交換を行った。
河口氏の講演要旨は次のとおり。

CSRは「企業の内側に何があり、外側からどう思われているか経営者と社員で再確認すること」と定義できる。内側の再確認は企業のミッションの確認、外側の再確認は社会という相手を知ることである。社会をみる際には、ビジネスチャンスという視点以外で考えてもらいたい。目の前の顧客のニーズに応える事業部と異なり、現状、ビジネス的には実現が難しいものの、潜在的にあるステークホルダーのニーズをチェックするのがCSR担当者の役割である。

CSR元年と呼ばれた2003年ごろは、CSRといえば企業不祥事対応の側面が強かったが、最近ではCSRを企業戦略の中核と位置づけ前向きに取り組む経営者も増えている。経営者は、経営のチャンスにしようとしている。

15年から、CSRは新しい時期に入ったといえる。SDGs(持続可能な開発目標)の採択やCOP21での気候変動枠組みづくりなど、持続可能な社会を目指す動きが始まっているからだ。

そして、注目すべきは、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)がPRI(国連責任投資原則)に署名したことだ。これは、国内最大級の投資家がESG投資(環境・社会・ガバナンス関係の取り組みに優れた企業への投資)を始めることを意味する。これまで日本のESG投資市場は個人投資家向け商品が細々と売られていた程度だったが、潮目が変わる。実際に運用を受託する金融機関も、ESG投資に取り組む体制づくりを始め、投資先企業にESGに関する情報を求めるようになるだろう。投資家によるチェックの強化は、企業のCSR推進にとって後押しになる。

私は人事や生産といった諸々のビジネス戦略とCSRの度合いとを掛けたものが企業価値の算出式だと考えている。例えば、人事にCSRの要素が掛け合わさったワーク・ライフ・バランスの価値や、生産にCSRの要素が掛け合わさったゼロエミッションやフェアトレードの価値などの総和が企業価値だ。

ここで大事なのは、企業価値は掛け算の積なので、ビジネス戦略とCSRの両方がしっかりしていないと、高い価値にはならないということだ。CSRが優れているだけでは、企業価値を評価する投資家の関心を引くことはできないが、企業戦略がしっかりしている会社はCSRで付加価値をつけるという発想も大事だと思う。

◇◇◇

講演後、会員企業を対象に実施した「2014年度社会貢献活動実績調査結果」を取りまとめた。

【政治・社会本部】

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