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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2015年11月12日 No.3246 COP21に向けた気候変動交渉の展望と課題を聞く -東京大学公共政策大学院の有馬教授と懇談/環境安全委員会地球環境部会

今年12月、パリで開催される国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)において、2020年以降の国際枠組みについて合意することが目指されている。

そこで、経団連の環境安全委員会地球環境部会(佐久間総一郎部会長)は5日、東京・大手町の経団連会館で会合を開き、国際交渉(COP21)および国内対策のあり方について、東京大学公共政策大学院の有馬純教授から説明を聞き、意見交換を行った。

有馬教授は、経済産業省において、COP14から16まで交渉官を務めた経験がある。有馬教授の説明の概要は次のとおり。

■ COP21(国際交渉)のあり方

これまでの国際交渉では、すべての国が参加することや、ボトムアップ型アプローチに基づき各国が自主的な目標(約束草案)を提出(プレッジ)することが合意された。

しかし、数値目標の達成を法的義務とするか、また先進国と途上国との責任の差異化の有無など、残された論点も存在する。今回の国際交渉に向け、次の点に留意すべきである。

  1. (1)すべての国の参加が前提
    数値目標の達成の法的義務化などは、参加国を減らすことにつながる。京都議定書の反省を踏まえ、すべての国が参加可能な柔軟性を持つ目標とすべきである。

  2. (2)努力の公平性の確保
    先進国間での温室効果ガスの特定年からの削減率の大小を比べることは、各国のこれまでの環境に左右されるため、本質的に重要なことではない。限界削減費用などを比較し、各国の努力の公平性が確保されることが重要である。

  3. (3)削減目標以外の貢献
    日本の産業界はこれまで、自主的・主体的な取り組みを通じ、CO2排出削減に具体的な成果を挙げてきた。自主的な取り組みにもかかわらずこれを実現できたのは、これから国際社会が合意しようとしているプレッジ・アンド・レビュー方式(各国が自主的に目標を設定し、その進捗をレビューする方式)によって、PDCAサイクルの仕組みを回すことができたからにほかならない。この経験を情報発信することで世界に貢献すべきである。
    また、日本の強みである低炭素技術の普及や、革新的技術開発の実現により、温暖化問題の抜本的解決にも貢献すべきである。その情報発信において、国連の場だけではなく、さまざまな機会を通じて発信すべきである。

■ 国内対策のあり方

  1. (1)プレッジ・アンド・レビュー方式の国際枠組みのもとでの国内政策は、政府による介入度を抑制し、民間の自主的・主体的取り組みを後押しする制度とすべきである。

  2. (2)目標値(26%削減)は、エネルギーミックスなどその前提となった条件が実現したうえで達成可能となる。エネルギーミックスが変更された場合、国連に登録した目標も柔軟に見直すべきである。

  3. (3)大幅な削減努力を実現するためには、革新的技術開発と普及が必要である。そのためには、政府による戦略的な研究開発投資が不可欠である。政策資源に限りがあるなかで、既存技術の普及に向けられている政策資源を、革新的技術開発に振り向ける必要がある。

【環境本部】

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