Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2015年11月12日 No.3246  働き方改革セミナー -企業事例「男性社員の育休取得促進等の取り組み」

経団連は10月16日、東京・大手町の経団連会館で「働き方改革セミナー」を開催した(基調講演は前号掲載)。モデレーターの武石恵美子法政大学教授の進行のもと、家事・育児の男女共同参画に向けて、男性社員の育休取得促進等に組織的に取り組んでいる企業4社から説明を聞いた。

■ 日本生命保険

日本生命保険の浜口知実人事部輝き推進室長は、男性の育休取得促進について、「人事部による取得計画の徹底フォローや育休と育児にかかわる情報提供、さらに経営層からのメッセージの発信によって、2013、14年度の2年連続で目標の取得率100%を実現することができた」と取り組みとその成果を説明。

また、「今年度から『イクボス』育成という新たな取り組みを始める。対象は所属長を想定しており、人材育成、環境整備、組織・風土づくりのキーパーソンとして成長してもらうねらいがある」と今後の方針を示した。

武石教授が「男性の育休取得促進にあたり、どのように取り組みを全国の各営業所へと広げていったのか」と質問。浜口氏からは「最も取得が難しいと考えられていた営業現場で、幸いにもロールモデルとなる支社が現れた。その取り組みを全国の支社へと横展開していった」と回答があった。

■ リコー

リコーの児玉涼子人事部ダイバーシティ推進グループリーダーは、男性の育休取得促進を始めた背景として、「性別役割分担意識の払拭、また働き方の見直しのきっかけにしたかった」と発言。具体策の1つとして「育休取得が昇格・昇級査定等の処遇面で不利に働かない取り扱いとその周知」に関する説明があった。

これまでの取り組みについては「成果は挙げつつあるものの、誰もが気兼ねなく育休を取得できるようになるには、さらなる風土の醸成が必要」と指摘。「育休取得者と未取得者では平均労働時間に大きな差があることから、生産性向上と労働時間低減の取り組みもさらに進めていく」と語った。

武石教授は「社内制度の周知はどのように展開しているか」と質問、児玉氏は「事あるごとに発信しており、例えばファミリーデーなどのイベント告知などで社内制度の存在を知ってもらえるよう務めている」と答えた。

■ ピジョン

ピジョンの庭田平人事総務部人事グループマネージャーは「当社は育児用品を扱っており、さまざまな育児支援制度を用意し、男性の育児参加も進めてきた」としたうえで、「その代表例は、男女ともに子供が1歳6カ月になるまでの間に1カ月間有給で育児休職できる『ひとつきいっしょ制度』である」と説明した。

庭田氏は「『ひとつきいっしょ制度』を取得しない場合には、取得しない社員の上司が、社長に対してその理由を説明しなければならないこととした。準備に1年半もの時間があるなかで、男性の部下を1カ月休ませるための業務調整ができないのはマネジメントの問題だから」と強調した。

武石教授の「男性の1カ月の休みは職場の負担も大きい。代わりの人員を手当てするなどのサポートはしているのか」との質問に対して庭田氏は「女性の育休と違い男性の育休は短期間のため、部署内でカバーするのが基本である」と答えた。

■ 日本レーザー

日本レーザーの近藤宣之社長は「当社は一度経営破綻し、経営再建のために私が社長に就任した。人を雇う時に性別や国籍、学歴不問としており、最初からダイバーシティ経営だった」と語った。

近藤氏は「多様な人材に活躍してもらうために、性別・学歴・労働時間を問わず処遇した結果、女性の管理職比率が3割に達しているほか、外国人の女性の管理職も出てきた」と説明。また、「ダブル・アサインメントとマルチ・タスクで多様な働き方を支援する仕組みを構築している。ただ、仕組みが実際に動くには社員それぞれが利他の精神を持つ必要があり、日ごろから社長と社員との懇談の機会を設けるなどして、風通しをよくしている」と述べた。

このほか近藤氏は「働き方の改革を進めるには、社長自身が変わることが一番重要だ」と強調した。

武石氏の進行のもと4社が取り組みを紹介した

【経済政策本部】