Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2015年11月26日 No.3248  21世紀政策研究所が第116回シンポジウム開催 -COP21に向けた戦略めぐり議論

21世紀政策研究所(榊原定征会長、三浦惺所長)は10日、東京・大手町の経団連会館で同研究所会員企業、有識者ら216名の参加を得て第116回シンポジウム「COP21に向けた戦略を考える」を開催した。

同研究所ではかねてより澤昭裕研究主幹、有馬純研究主幹、および竹内純子研究副主幹を中心にCOP(国連気候変動枠組み条約締約国会議)への対応を研究しており、ボトムアップ方式等をはじめとする対応策を独自に提言するほか、経団連と連携して産業界の考え方を政府・与党、メディア等に働きかけてきた。今般、パリで開催されるCOP21では、京都議定書に代わる2020年以降の地球温暖化対策の国際枠組み策定に向け、大きなヤマ場を迎える。そこで議長国のフランスからティエリー・ダナ駐日大使を招くとともに、日本政府からは現在交渉にあたっている水越英明外務省参事官、奈須野太経済産業省課長、森下哲環境省課長の参加を得て、有馬研究主幹、竹内研究副主幹、手塚宏之経団連環境安全委員会国際環境戦略ワーキング・グループ座長との間で議論を行った。

冒頭、基調講演を行ったダナ大使は、地球温暖化に対する社会の認識が高くなっており、新たな枠組みの合意は楽観的にとらえていると述べる一方、COP21は終結点ではなく今後のスタートとなるべきで、そのためには枠組みのフォローアップに加え、企業や社会の責任についても考える必要があると指摘。また、途上国の努力を引き出すためには資金支援が必要で、日本によるさらなる拠出を期待するとの考えを示した。

続いて講演した有馬研究主幹は、トップダウン方式など京都議定書の手法はもはや時代遅れで、各国がその約束を自主的かつ着実に実行することが重要であり、日本は数字ではなく知見と技術で国際貢献すべきであると指摘した。また、国内対策では法的拘束力の強化ではなく、民間の取り組みの後押しを基本とするほか、今後約束草案の前提に変更が生じた場合には数値目標も柔軟に見直す必要性を強調した。さらに、大幅な温室効果ガス排出削減を実現するには革新的技術の開発と普及が必要であるが、莫大な資金と時間が必要となるため、政府による研究投資支援や企業支援を将来性のある技術に戦略的に集中させ、官民一体で開発・普及を進めていくべきであるとの見解を示した。

パネルディスカッションでは、竹内研究副主幹がモデレーターとなり、COP21での国際交渉の進め方や日本、特に産業界への影響をめぐり議論が行われた。このなかで日本政府からは、COP21に向けた対応方針として次の点が表明された。第1に新たな枠組みには米中を含むすべての国が参加し、各国が能力・事情に応じた貢献を行う、いわゆる「公平かつ実効的な国際枠組み」の合意を目指す。第2に各国が削減目標向上のため継続的に見直しを行う仕組みの形成を目指す。第3に日本が主導するJCM(二国間オフセットメカニズム)の仕組みが新たな枠組みのなかに最大限組み込まれるよう努力する。第4に途上国に対する資金支援において一部の国に過度な負担が生じないよう努力する。

次に産業界側からは手塚座長が経団連「低炭素社会実行計画」が新たな国際枠組みの先行モデルになり得ると指摘した。そのうえで、世界規模での温室効果ガス排出削減のためには、資金メカニズムと技術メカニズムとが車の両輪として有機的に機能する仕組みを構築し、日本企業の優れた環境技術を世界に普及させるべきであるとの見解を述べた。

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今後同研究所では、COP21の結果を踏まえたシンポジウムを年明けに再度開催するとともに、新たな枠組み合意後の国内対策の環境整備について検討を進める予定である。

【21世紀政策研究所】