Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2015年12月3日 No.3249  インドの政治経済と労務管理の現状を聞く -雇用政策委員会国際労働部会

経団連は11月25日、東京・大手町の経団連会館で雇用政策委員会国際労働部会(得丸洋部会長)を開催した。日本貿易振興機構(JETRO)ニューデリー事務所の野口直良所長から、インドの政治経済と労務管理の現状について説明を聞いた。
説明の概要は次のとおり。

■ インドの政治経済情勢

インドのモディ政権は、2014年5月の政権発足後、経済改革や社会基盤の底上げに向けた取り組みを進めている。ただ、脆弱な与党の政権基盤等もあって、具体的施策が進んでいない。

インド経済は、これまでのインフレが沈静化し回復基調にある。農業主体の産業構造からIT産業が勃興してきているが、第2次産業の成長が不十分である。そのため、14年9月に発表された「メイク・イン・インディア」キャンペーンでは、GDPに占める製造業の割合を現在の16%から、22年までに25%に引き上げる目標が掲げられた。

今後のインドの魅力として、ピラミッドを維持したうえでの人口増加、中間所得層の増加に裏打ちされた所得水準の向上が挙げられる。

■ 日系企業の現状と課題

こうした状況を受けて、日系企業のインドへの進出も進んでいる。インドは東アジアのサプライチェーンの一角を占めるとともに、その地政学的位置や印僑の存在によって中東・アフリカへの輸出拠点としても重要である。

現状では、日系企業がインドに進出後、十分な利益を上げるまで時間がかかっている。また、日系企業の6割近くが完全内販型で、売上高に占める輸出比率は10%程度にすぎない。

従来、日系企業にとってインド進出上の課題は、インフラの未整備や労働問題等であったが、昨今は、従業員の賃金上昇、煩雑で時間を要する通関手続き、従業員の質等に変わってきている。

■ インドにおける労務管理

インドは、地域によって、民族、言語、宗教、文化等が異なる多様性を持つ国である。モディ政権は、こうした多様性を踏まえ、労働法制改革を各州に担わせている。日本企業がインドに進出する際、こうした各地域の特性や人々の気質を十分理解したうえで、人事制度を構築する必要がある。

労務管理についても、日本流ではなく、現地の商習慣等を踏まえた制度設計、運用が求められる。例えば、インドでは離職率が高く、優秀な従業員の離職を防ぐためには、個々人の成果を踏まえた評価制度を構築して、実績・実力に基づいた公平な処遇を行うことが必要となる。また、無用な労使紛争を避けるには、就業規則や雇用契約など労使双方が納得できる仕組みの構築が求められる。女性の活躍推進やレクリエーションの実施など従業員が働きやすい職場環境の整備も重要である。

【国際協力本部】