Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2015年12月10日 No.3250  「日ロ経済関係の基本的な考え方」公表 -互恵的かつ多面的な経済関係の構築に向けて

今年は経団連日本ロシア経済委員会の前身である日ソ経済委員会の発足から半世紀という節目の年にあたる。また、プーチン大統領訪日に向けて両国政府間の調整が行われている。

そこで、日本ロシア経済委員会(朝田照男委員長)は7日、委員会の活動指針として「日ロ経済関係の基本的な考え方」を取りまとめ公表した。提言の概要は次のとおり。

■ 経団連のこれまでの取り組み

経団連は1965年の日ソ経済委員会発足以降、二国間貿易・投資の窓口として国家プロジェクトの組成等に取り組む一方、93年以降13回に及ぶ日本ロシア経済合同会議を開催してきた。また、ミッション派遣や、毎年実施しているロシアのビジネス環境等に関するアンケートを通じて、日ロ経済関係の発展に積極的に寄与してきた。

■ 日ロ経済関係の現状評価

2014年の日ロ貿易高は約3.6兆円と過去最高水準に達したが、ロシアから日本への輸入が過去最高の2.6兆円に達する一方、日本の対ロ輸出は1兆円を割り込み、リーマンショック後、初めて減少した。

また、日本の対ロ直接投資が昨年3億ドルを割り込むなど、日本企業のロシアに対するスタンスは依然として慎重である。

昨今のルーブル安等に伴うロシア国内の消費マインドの低迷等も影響したとはいえ、両国の経済力や市場規模、地理的近接性等を考慮すれば、貿易・投資とも、いまだポテンシャルが十分に活かされているとはいい難い。

■ ロシア・ビジネスの問題点=ロシア政府が取り組むべき諸課題

経団連の最新のアンケート結果(注)によれば、原油価格下落等に伴う景気低迷等を背景に、ロシア・ビジネスを悲観的にとらえる企業が増加している。

極東をゲートウェーとした日ロビジネスにてこ入れする観点からも、ロシア政府には(1)行政手続き(2)法制度(3)輸出入手続き(4)税制・会計制度(5)駐在員の出入国・就労(6)金融政策・金融制度(7)国内産業優遇方針(輸入代替政策)――等に関する課題の解決に取り組むことが求められる。

その際、時間軸を念頭に置いた具体的なアクションプランづくりについて、日ロ両国の官民が協議する場を設定すべきである。

■ 両国政府主導で取り組むべき諸課題

日ロ経済関係の拡大と深化という観点から、両国政府は次の重点課題に取り組むべきである。

  1. (1)ロシアにおける基幹インフラ・都市環境インフラの整備(JBIC(国際協力銀行)の出融資・保証やNEXI(日本貿易保険)の保険の拡充・条件緩和を通じて、プロジェクトを推進)
  2. (2)ロシア経済近代化に向けた両国の官民連携(極東新型特区等の活用に際し、利用者や投資家のフィードバックを踏まえたPDCAサイクルを確立)
  3. (3)人の移動の促進に向けた政府間協議(査証の相互免除とあわせて、駐在員の出入国・就労に関する手続きを緩和)
  4. (4)北極海における日ロ協力(北極海航路の開発や資源探査に関するポテンシャルを追求)

■ 日ロ経済関係の拡大・深化に向けて

両国間には政治的・歴史的に困難な課題が横たわっているが、日ロ経済関係の拡大・深化に向けた取り組みを通じて、平和条約の早期締結など両国の将来を見据えた、他の分野への波及効果をもたらすことが期待されている。経団連としては、真に互恵的かつ多面的な経済関係を構築し、相互の理解と信頼を醸成すべく、隣国ロシアとのビジネス対話を継続していく。

※提言の全文は経団連ウェブサイトに掲載

【国際経済本部】